わがままだって言いたくなる
第7話
晃は比奈子を抱っこして後部座席の
チャイルドシートのベルトを調整した。
なぜだかグズグズしている。
「どした?
おもちゃ置いとくか?」
バックの中からお米の輪っかのおもちゃを手元に置いたが、すぐにポイっと投げられた。
両手を伸ばしてもう一回抱っこを要求したが、チャイルドシートのベルトは締めてある。
「目的地に着いてから抱っこして
やるからな。な?
この抱っこ紐あるから。」
(せっかく2人っきりになったのに
抱っこしている時間はほんの数分。
車に乗ってしまうと、尚更、後部座席で
チャイルドシートに乗せられて
晃の手さえも届かない。
これが、大人なら、助手席で
手繋げるのに…。)
比奈子の前世 絵里香が独身で
晃と交際していた時は
手を繋ぎたいがために助手席座っていた。
運転している時、カーブや右折、
左折以外 の直進道路なら、
繋いでくれていた。
今は鏡越しで顔を見ることは
できるが、手が遠い。
「比奈子〜、少し遠くまで運転するからな。
寝ててもいいんだぞ。」
そんな言葉、前なんて気にしてなかった。
ただ、好きな音楽聴いて、
運転するだけ。
会話という会話してなかった気がする。
もしかして、私といる時、
つまらなかったのかな。
なんで話しかけてくれなかたんだろう。
「絵里香がいたときは
疲れてると思って
運転集中してたけど、
果歩もいないから気にしないで
会話できるな。」
(ん?それってどういうことじゃ。)
「話するのも体力消耗するからな。
精神的能力つうのかな。
ただ、単に、絵里香を喜ばす会話が
思いつかなかっただけなんだけどさ。
ってなんで、
比奈子に話しかけてるんのかな。
お父さんおかしいな。」
「だあ!」
比奈子は声を出してみた。
「お?返事してるってことか。
お母さん、具合悪くしてるからな。
今のうちにお出かけしておこう。」
「だぁ!!!」
大きな声で返事してみた。
晃は嬉しくなる。
比奈子の喜んでいる姿を見て、
晃も楽しくなった。
***
ショッピングモールの駐車場に着いた。
晃は、チャイルドシートから比奈子をおろし、抱っこ紐を腰につけて比奈子をのせた。
案外手早く付けられるものだ。
初めての割にできている。
「俺、何とかできるわ。
やればできるじゃん。」
自分自身を褒める晃。
これを前からやってくれていればと
ため息をつくが、
あまりにも密着する体に
顔を真っ赤にして
照れていた。
いくら大人同士でも
ずっと抱っこされているという
状態はない。
親子の特権だ。
本当ならば母をもとめるだろうけど
今の比奈子にとっては
晃に抱っこされて
この上ない幸せだった。
嫌でもそばにいる。
「さてと、どこに行こうかな…。
紙オムツ切れそうだって
果歩言ってたなぁ。
あと、
汗かきやすいからインナーも多めに
欲しいって言ってたかな。」
ブツブツと独り言を言いながら、
お店の中をうろうろする。
抱っこ紐に乗せられながら比奈子は終始
ニコニコしている。
本当はオムツも濡れていたし、
お腹も空いていたが
もう、心が満たされていて
そんなのどうでもいいって思っていた。
顔を見上げると
晃の顎が見える。
朝にひげを剃っていたのに
もうプチプチと小さいひげが生えていた。
手を伸ばして触ろうとしたが、
届かない。
「ん?どうかした?
比奈子、今、買い物するからな。
オムツは大丈夫か?
買い物したら、休憩がてらトイレに
行かないとだな。」
手をパシッと掴まれた。
顎を触りたかったのにと思いながら
手を引っ込めた。
いつも果歩が抱っこしているときは
トイレだ腹減ったと逐一泣いていた。
今日はやけに静かだなと
思った晃。
キッズファッションコーナーで紙おむつと
インナーを買う。
ウロウロと何か無いかと回っていると
どこかで見たことあるママと
抱っこされていた男の子がいた。
「あれ、比奈子ちゃんですか?」
「え、あ、ああ。そうですけど…。
すいません、どちら様ですか?」
「すいません、いつも果歩さんと
仲良くしてます。
比奈子ちゃんの同級生の
佐々木隆二の母、佐々木あずさと言います。
比奈子ちゃんパパ?
お一人ですか?」
隆二はぐるりと抱っこ紐から
こちらをのぞいていた。
比奈子も横から隆二の顔を見た。
前世の記憶を辿ると晃は
こんなに子どもをお世話するイメージは
なかった前世の龍次郎の隆二は
ケッとつばを吐き捨てた。
(結婚相手が変われば、この調子かよ。
前から子どもの世話してればいいものを
絵里香の時は子育て放棄に近いくせに…。
最低だな。)
「ちょっと、隆二、つば吐かないで!
汚いでしょう。
ごめんなさい。
かかってなかったですか?」
「あ、いえ、大丈夫です。
アニメでもツバ吐くキャラクターとか
いますし、子どもは何でもやりたい
年頃ですから。気にしないですよ。
今日は、1人で比奈子のこと見ようと
思ってて…。
果歩にはウチで休んでもらってるんです。」
「えー、羨ましい。
優しいんですね。
うちの旦那にも爪の垢を煎じて
飲ませてやりたいわ。
今日は、日曜日でも旦那は仕事だから
頼れないんですけどね。」
「そんなことないです。
お互いに助け合わないと
って考えてるんで……。
旦那さん、日曜日も仕事ですか。
お疲れ様ですね。」
「いいご夫婦ですね。
本当、日曜日こそ、
家にいて欲しいものですが、
自動車整備の仕事だから日曜日は稼ぎ時
なんです。
あれ、小松さんは
市役所にお勤めですよね?」
「へぇー、自動車整備ですか。
旦那さん手先が器用なんですね。
私は事務仕事ばかりやってきたので
他に取り柄がないものですから。
市役所ですよ。
定時に上がれるのには助かっています。
あ、すいません。
急いでいますので、そろそろ…。」
「あー、話すぎちゃいましたね。
ごめんなさい。
奥さんによろしくお願いします。」
「はい。では失礼します。」
比奈子はその様子を見て
目を見開いた。
前は話に花を咲かせて、
カフェにでも言って話しませんかみたいな
雰囲気に持って行ってた。
今回はさらっと話を終わらせている。
顔を見上げると
ヒヤヒヤした顔をしていた。
「果歩の知り合いだと、すぐバレるからな。
あまり長話してると
ボロが出そうだからな。
やめられてよかった。」
(なんだ、そういうことか。
本当は話したかったんだな。
女好きはどこでも奥さんが変わっても
同じか。)
比奈子は頬を膨らませて機嫌悪そうに
している。
思い出したように泣いて見せた。
紙おむつの交換と
そろそろお腹すいた
アピールだ。
「お、どうした、どうした。
んじゃ、トイレ行って取り替えるか。
あとミルクね。」
晃はショッピングモールの
多目的トイレに入った。
大きいお店はトイレも子育て世代に
便利な作りとなっている。
キッズトイレもたくさんあって、
子どもたちは喜んで入っていく。
抱っこ紐からおろして、
紙オムツを交換した。
持ってきていた大量のビニール袋が
役に立つ。
いつも果歩は出かける前にビニール袋が
ないと騒いでいたのはこの事かと
納得した。
バックのファスナーを閉める。
オムツ交換台のベルトを締めて、
比奈子を寝返り打たないように
晃自身もトイレを済ませた。
「そっか、このタイミングで行かないと
大人はトイレ行くタイミング逃すよな。
いつも、果歩に任せてたから
楽させてもらっていたな、俺。
1人で行くトイレのありがたさだな。」
ブツブツ独り言を言う晃。
比奈子は
(やっと気づいたかお馬鹿さん。
もっと早くから気づいて欲しかったわ。)
また抱っこ紐に乗せらせて
ご機嫌になる比奈子。
一緒の時間が止まってしまえばいいと
思ってしまった。
チャイルドシートのベルトを調整した。
なぜだかグズグズしている。
「どした?
おもちゃ置いとくか?」
バックの中からお米の輪っかのおもちゃを手元に置いたが、すぐにポイっと投げられた。
両手を伸ばしてもう一回抱っこを要求したが、チャイルドシートのベルトは締めてある。
「目的地に着いてから抱っこして
やるからな。な?
この抱っこ紐あるから。」
(せっかく2人っきりになったのに
抱っこしている時間はほんの数分。
車に乗ってしまうと、尚更、後部座席で
チャイルドシートに乗せられて
晃の手さえも届かない。
これが、大人なら、助手席で
手繋げるのに…。)
比奈子の前世 絵里香が独身で
晃と交際していた時は
手を繋ぎたいがために助手席座っていた。
運転している時、カーブや右折、
左折以外 の直進道路なら、
繋いでくれていた。
今は鏡越しで顔を見ることは
できるが、手が遠い。
「比奈子〜、少し遠くまで運転するからな。
寝ててもいいんだぞ。」
そんな言葉、前なんて気にしてなかった。
ただ、好きな音楽聴いて、
運転するだけ。
会話という会話してなかった気がする。
もしかして、私といる時、
つまらなかったのかな。
なんで話しかけてくれなかたんだろう。
「絵里香がいたときは
疲れてると思って
運転集中してたけど、
果歩もいないから気にしないで
会話できるな。」
(ん?それってどういうことじゃ。)
「話するのも体力消耗するからな。
精神的能力つうのかな。
ただ、単に、絵里香を喜ばす会話が
思いつかなかっただけなんだけどさ。
ってなんで、
比奈子に話しかけてるんのかな。
お父さんおかしいな。」
「だあ!」
比奈子は声を出してみた。
「お?返事してるってことか。
お母さん、具合悪くしてるからな。
今のうちにお出かけしておこう。」
「だぁ!!!」
大きな声で返事してみた。
晃は嬉しくなる。
比奈子の喜んでいる姿を見て、
晃も楽しくなった。
***
ショッピングモールの駐車場に着いた。
晃は、チャイルドシートから比奈子をおろし、抱っこ紐を腰につけて比奈子をのせた。
案外手早く付けられるものだ。
初めての割にできている。
「俺、何とかできるわ。
やればできるじゃん。」
自分自身を褒める晃。
これを前からやってくれていればと
ため息をつくが、
あまりにも密着する体に
顔を真っ赤にして
照れていた。
いくら大人同士でも
ずっと抱っこされているという
状態はない。
親子の特権だ。
本当ならば母をもとめるだろうけど
今の比奈子にとっては
晃に抱っこされて
この上ない幸せだった。
嫌でもそばにいる。
「さてと、どこに行こうかな…。
紙オムツ切れそうだって
果歩言ってたなぁ。
あと、
汗かきやすいからインナーも多めに
欲しいって言ってたかな。」
ブツブツと独り言を言いながら、
お店の中をうろうろする。
抱っこ紐に乗せられながら比奈子は終始
ニコニコしている。
本当はオムツも濡れていたし、
お腹も空いていたが
もう、心が満たされていて
そんなのどうでもいいって思っていた。
顔を見上げると
晃の顎が見える。
朝にひげを剃っていたのに
もうプチプチと小さいひげが生えていた。
手を伸ばして触ろうとしたが、
届かない。
「ん?どうかした?
比奈子、今、買い物するからな。
オムツは大丈夫か?
買い物したら、休憩がてらトイレに
行かないとだな。」
手をパシッと掴まれた。
顎を触りたかったのにと思いながら
手を引っ込めた。
いつも果歩が抱っこしているときは
トイレだ腹減ったと逐一泣いていた。
今日はやけに静かだなと
思った晃。
キッズファッションコーナーで紙おむつと
インナーを買う。
ウロウロと何か無いかと回っていると
どこかで見たことあるママと
抱っこされていた男の子がいた。
「あれ、比奈子ちゃんですか?」
「え、あ、ああ。そうですけど…。
すいません、どちら様ですか?」
「すいません、いつも果歩さんと
仲良くしてます。
比奈子ちゃんの同級生の
佐々木隆二の母、佐々木あずさと言います。
比奈子ちゃんパパ?
お一人ですか?」
隆二はぐるりと抱っこ紐から
こちらをのぞいていた。
比奈子も横から隆二の顔を見た。
前世の記憶を辿ると晃は
こんなに子どもをお世話するイメージは
なかった前世の龍次郎の隆二は
ケッとつばを吐き捨てた。
(結婚相手が変われば、この調子かよ。
前から子どもの世話してればいいものを
絵里香の時は子育て放棄に近いくせに…。
最低だな。)
「ちょっと、隆二、つば吐かないで!
汚いでしょう。
ごめんなさい。
かかってなかったですか?」
「あ、いえ、大丈夫です。
アニメでもツバ吐くキャラクターとか
いますし、子どもは何でもやりたい
年頃ですから。気にしないですよ。
今日は、1人で比奈子のこと見ようと
思ってて…。
果歩にはウチで休んでもらってるんです。」
「えー、羨ましい。
優しいんですね。
うちの旦那にも爪の垢を煎じて
飲ませてやりたいわ。
今日は、日曜日でも旦那は仕事だから
頼れないんですけどね。」
「そんなことないです。
お互いに助け合わないと
って考えてるんで……。
旦那さん、日曜日も仕事ですか。
お疲れ様ですね。」
「いいご夫婦ですね。
本当、日曜日こそ、
家にいて欲しいものですが、
自動車整備の仕事だから日曜日は稼ぎ時
なんです。
あれ、小松さんは
市役所にお勤めですよね?」
「へぇー、自動車整備ですか。
旦那さん手先が器用なんですね。
私は事務仕事ばかりやってきたので
他に取り柄がないものですから。
市役所ですよ。
定時に上がれるのには助かっています。
あ、すいません。
急いでいますので、そろそろ…。」
「あー、話すぎちゃいましたね。
ごめんなさい。
奥さんによろしくお願いします。」
「はい。では失礼します。」
比奈子はその様子を見て
目を見開いた。
前は話に花を咲かせて、
カフェにでも言って話しませんかみたいな
雰囲気に持って行ってた。
今回はさらっと話を終わらせている。
顔を見上げると
ヒヤヒヤした顔をしていた。
「果歩の知り合いだと、すぐバレるからな。
あまり長話してると
ボロが出そうだからな。
やめられてよかった。」
(なんだ、そういうことか。
本当は話したかったんだな。
女好きはどこでも奥さんが変わっても
同じか。)
比奈子は頬を膨らませて機嫌悪そうに
している。
思い出したように泣いて見せた。
紙おむつの交換と
そろそろお腹すいた
アピールだ。
「お、どうした、どうした。
んじゃ、トイレ行って取り替えるか。
あとミルクね。」
晃はショッピングモールの
多目的トイレに入った。
大きいお店はトイレも子育て世代に
便利な作りとなっている。
キッズトイレもたくさんあって、
子どもたちは喜んで入っていく。
抱っこ紐からおろして、
紙オムツを交換した。
持ってきていた大量のビニール袋が
役に立つ。
いつも果歩は出かける前にビニール袋が
ないと騒いでいたのはこの事かと
納得した。
バックのファスナーを閉める。
オムツ交換台のベルトを締めて、
比奈子を寝返り打たないように
晃自身もトイレを済ませた。
「そっか、このタイミングで行かないと
大人はトイレ行くタイミング逃すよな。
いつも、果歩に任せてたから
楽させてもらっていたな、俺。
1人で行くトイレのありがたさだな。」
ブツブツ独り言を言う晃。
比奈子は
(やっと気づいたかお馬鹿さん。
もっと早くから気づいて欲しかったわ。)
また抱っこ紐に乗せらせて
ご機嫌になる比奈子。
一緒の時間が止まってしまえばいいと
思ってしまった。