わがままだって言いたくなる
第8話
買い物から帰宅した晃と比奈子。
果歩はガレージに車が入る音で気づいた。
車の後部座席では、
熟睡している比奈子がいた。
0歳児にとっての外出は大人で言うところの仕事に行くような気疲れを要する。
いや、それ以上の気疲れかもしれない。
よだれを垂らし、持っていたおもちゃも
足元に落としていた。
「比奈子、だいぶ、疲れたんだな。」
そう言いながら、晃はチャイルドシートからおろし、家の中のベビーベッド寝かせた。
「おかえり。」
パジャマ姿の果歩が玄関で出迎えた。
「ただいま。熱下がったの?」
「うん。おかげさまでゆっくり休めたよ。
お粥もごちそうさま。」
「そっか。それは良かった。」
晃は車から
荷物をどんどん家の中に運び入れた。
買い物していた袋と
いつもの大きなバックが重かった。
出かけるとなるといつも荷物が多くなる。
忘れ物ももちろん多い。
果歩が1人で出かけるときも同じだなと
晃は、1人、何度も家と車を
行ったり来たりして買ってきた
荷物を運んでいた。
「何か買ってきたの?」
「うん。最近、果歩が
あれがないとかいるとか
言ってただろ?
比奈子の紙おむつと
半袖インナーを選んで
買ってきたよ。」
果歩はクローゼットの中から
どーんと買っていた紙おむつ3パックを
晃に見せた。
「え、あ、あれ?
もう買ってたの?」
「これ、私のおばあちゃんから
最近送ってくれてて。
買わずに済んでたの。
ごめん、言わなかった。
あと、インナーも買ってたけど
それは多くあっても困らないから
大丈夫。
買うなら聞いてよ。」
「あー、気を利かせたつもりだった。
先走ったね。」
がっかりした晃は首をがっくりした。
果歩は買ってきた袋の中を漁った。
「これは大正解だね。」
お弁当やさんの唐揚げ弁当が2つ
入っていた。
「あ、それも入っていたんだった。
ごめん、病み上がりなのに
こってりしたもの
買ってきたね。」
「私、からあげは、
具合悪くても食べられるから、
大丈夫だよ。」
「そっか。そこだけ合格か。」
「そんな落ち込まないで。
私が具合悪くしてると思って
晃なりに頑張ったんだもんね。
あ・り・が・と・う!」
果歩は晃の背中をポンと優しく触れた。
「う、うん。」
「晃、無理してない?
失敗しないようにって
必死で良くしようってやってる?」
「え?」
果歩は晃をハグをして、
背中を撫でた。
「よしよし。」
「俺は犬か?」
「大丈夫だよ。
無理しなくても。
頼まれたことだけやっても
私は嫌いにならないよ。
変に気を使わないで。」
「……うん。」
ベビーベッドで横になっていた
比奈子は、いびきをかいたふりをした。
果歩の言ったことをしっかり聞いていた。
(夫婦で気を使おうと晃は考えていたの?
どうして果歩はそう考えてるって
わかるのかな。
私にはわからない領域だ。)
「でも、果歩、具合悪くしてたし、
比奈子のこと見てないと
具合悪いのに
果歩が動いちゃうと思ったから。」
「あ〜……。まぁ。それはあるよね。」
果歩の性格柄、具合悪いことを隠して
そのままやり続けることが多い。
熱を測っても周りには絶対本当のことを
言わない。
それが例え高熱39.0度を超えていても
ずっと働き続ける。
さっきの保冷剤一つ取るだけでも
比奈子を優先して自分のことは
後回しにしていた。
それは、仕事をするのも
一緒で、
熱があっても素知らぬ顔をして
働き続ける。
一緒に働いていた時も
こちらの体調は気にかけるが、
自分自身は
全然労わろうとしない。
晃はそういう性格だと前から知っていた。
絵里香にはない性格だった。
元嫁の絵里香は具合悪いとすぐ訴えては
育児、家事から逃げる。
わかりやすい。
(悪かったわね。
具合悪いから休むのをサボりなのか。
無理して働くのが美談ってことに
してほしくないけどね。
体調管理も仕事のうちだと思うけど…。)
比奈子は
ベビーベッドの上で寝たふりをしながら
考えた。
「ま、いいじゃん。
俺、今日、結構頑張ったよ。
教えられなくても、比奈子1人連れて
買い物できたし。
泣いて、オムツ交換になった時は
多目的トイレ行くし、
お腹すいたって泣かれた時は
赤ちゃんルームのポットの
お湯でミルク作って、水道で冷まして
飲ませたの。
ミルクの前にパウチの離乳食も
食べさせたよ。
結構、大変だね。
この月齢で買い物するの。
やっぱ、ショッピングモールは大きいから
赤ちゃん連れでも助かるものが
いっぱいあるね。
良い勉強になりましたよ。」
腰に手をあてて、えっへんというような
かっこうになる。
果歩はまた小さい子供に接するかの
ようによしよしと頭を撫でた。
「俺は犬じゃない!ワン。」
「たいへんよくがんばりました!」
母は、自然の流れですべて赤ちゃんミッションをこなすが、父は外の仕事が基本で
あって、赤ちゃんミッションは、スイッチが入らないとできないものだ。
向き不向きもあるだろう。
褒められないと次はないとめんどくさいこともある。果歩は、しっかりやってくれたことに感謝して、あえて、それ以上求めることはしなかった。むしろ、自分の仕事に手をつけられているようで、あまり心地よくなかったようだ。
人それぞれ子育ての考え方は違う。
父親としての役割も母親の判断で
変わることもある。
夫婦で会話して成り立つものかも
しれない。
晃は、これが正しくて正しくないとか
まだまだわからないなと
過去の失敗を活かせないこともあると
学んだ。
果歩はガレージに車が入る音で気づいた。
車の後部座席では、
熟睡している比奈子がいた。
0歳児にとっての外出は大人で言うところの仕事に行くような気疲れを要する。
いや、それ以上の気疲れかもしれない。
よだれを垂らし、持っていたおもちゃも
足元に落としていた。
「比奈子、だいぶ、疲れたんだな。」
そう言いながら、晃はチャイルドシートからおろし、家の中のベビーベッド寝かせた。
「おかえり。」
パジャマ姿の果歩が玄関で出迎えた。
「ただいま。熱下がったの?」
「うん。おかげさまでゆっくり休めたよ。
お粥もごちそうさま。」
「そっか。それは良かった。」
晃は車から
荷物をどんどん家の中に運び入れた。
買い物していた袋と
いつもの大きなバックが重かった。
出かけるとなるといつも荷物が多くなる。
忘れ物ももちろん多い。
果歩が1人で出かけるときも同じだなと
晃は、1人、何度も家と車を
行ったり来たりして買ってきた
荷物を運んでいた。
「何か買ってきたの?」
「うん。最近、果歩が
あれがないとかいるとか
言ってただろ?
比奈子の紙おむつと
半袖インナーを選んで
買ってきたよ。」
果歩はクローゼットの中から
どーんと買っていた紙おむつ3パックを
晃に見せた。
「え、あ、あれ?
もう買ってたの?」
「これ、私のおばあちゃんから
最近送ってくれてて。
買わずに済んでたの。
ごめん、言わなかった。
あと、インナーも買ってたけど
それは多くあっても困らないから
大丈夫。
買うなら聞いてよ。」
「あー、気を利かせたつもりだった。
先走ったね。」
がっかりした晃は首をがっくりした。
果歩は買ってきた袋の中を漁った。
「これは大正解だね。」
お弁当やさんの唐揚げ弁当が2つ
入っていた。
「あ、それも入っていたんだった。
ごめん、病み上がりなのに
こってりしたもの
買ってきたね。」
「私、からあげは、
具合悪くても食べられるから、
大丈夫だよ。」
「そっか。そこだけ合格か。」
「そんな落ち込まないで。
私が具合悪くしてると思って
晃なりに頑張ったんだもんね。
あ・り・が・と・う!」
果歩は晃の背中をポンと優しく触れた。
「う、うん。」
「晃、無理してない?
失敗しないようにって
必死で良くしようってやってる?」
「え?」
果歩は晃をハグをして、
背中を撫でた。
「よしよし。」
「俺は犬か?」
「大丈夫だよ。
無理しなくても。
頼まれたことだけやっても
私は嫌いにならないよ。
変に気を使わないで。」
「……うん。」
ベビーベッドで横になっていた
比奈子は、いびきをかいたふりをした。
果歩の言ったことをしっかり聞いていた。
(夫婦で気を使おうと晃は考えていたの?
どうして果歩はそう考えてるって
わかるのかな。
私にはわからない領域だ。)
「でも、果歩、具合悪くしてたし、
比奈子のこと見てないと
具合悪いのに
果歩が動いちゃうと思ったから。」
「あ〜……。まぁ。それはあるよね。」
果歩の性格柄、具合悪いことを隠して
そのままやり続けることが多い。
熱を測っても周りには絶対本当のことを
言わない。
それが例え高熱39.0度を超えていても
ずっと働き続ける。
さっきの保冷剤一つ取るだけでも
比奈子を優先して自分のことは
後回しにしていた。
それは、仕事をするのも
一緒で、
熱があっても素知らぬ顔をして
働き続ける。
一緒に働いていた時も
こちらの体調は気にかけるが、
自分自身は
全然労わろうとしない。
晃はそういう性格だと前から知っていた。
絵里香にはない性格だった。
元嫁の絵里香は具合悪いとすぐ訴えては
育児、家事から逃げる。
わかりやすい。
(悪かったわね。
具合悪いから休むのをサボりなのか。
無理して働くのが美談ってことに
してほしくないけどね。
体調管理も仕事のうちだと思うけど…。)
比奈子は
ベビーベッドの上で寝たふりをしながら
考えた。
「ま、いいじゃん。
俺、今日、結構頑張ったよ。
教えられなくても、比奈子1人連れて
買い物できたし。
泣いて、オムツ交換になった時は
多目的トイレ行くし、
お腹すいたって泣かれた時は
赤ちゃんルームのポットの
お湯でミルク作って、水道で冷まして
飲ませたの。
ミルクの前にパウチの離乳食も
食べさせたよ。
結構、大変だね。
この月齢で買い物するの。
やっぱ、ショッピングモールは大きいから
赤ちゃん連れでも助かるものが
いっぱいあるね。
良い勉強になりましたよ。」
腰に手をあてて、えっへんというような
かっこうになる。
果歩はまた小さい子供に接するかの
ようによしよしと頭を撫でた。
「俺は犬じゃない!ワン。」
「たいへんよくがんばりました!」
母は、自然の流れですべて赤ちゃんミッションをこなすが、父は外の仕事が基本で
あって、赤ちゃんミッションは、スイッチが入らないとできないものだ。
向き不向きもあるだろう。
褒められないと次はないとめんどくさいこともある。果歩は、しっかりやってくれたことに感謝して、あえて、それ以上求めることはしなかった。むしろ、自分の仕事に手をつけられているようで、あまり心地よくなかったようだ。
人それぞれ子育ての考え方は違う。
父親としての役割も母親の判断で
変わることもある。
夫婦で会話して成り立つものかも
しれない。
晃は、これが正しくて正しくないとか
まだまだわからないなと
過去の失敗を活かせないこともあると
学んだ。