隣国王子に婚約破棄されたのは構いませんが、義弟の後方彼氏面には困っています
19.俺とクリスティーナ【アルバート】
【SIDE:アルバート】
俺の幼い頃の記憶はおぼろげだ。そんなうっすらな記憶の中で、母親なのかは分からないが、女の人と何かから逃げるように旅をしていた。
そして、旅の終わりにたどり着いたのはローセン家だった。あたたかな屋敷で、お腹いっぱいにシチューを食べたのを覚えている。そして、一緒にいた女の人は力尽きたように動かなくなった。泣きわめく俺を、抱きしめてくれたのはクリスティーナだった。
俺の新しい人生は、クリスティーナから始まったんだ。
俺が不安になると、すぐに気がついて、大丈夫だよって頭を撫でてくれた。突然現われた俺を、家族だと、自分の弟だと、本気で可愛がってくれた。
だから、本当は天涯孤独な俺なのに、寂しいなんて思わずにいられたのは、クリスティーナがいたからだ。
でも、彼女が聖女候補に選ばれてからは、いつも一緒というわけにはいかなかった。寂しくて、ずっと家に居て欲しいと駄々をこねたかったけれど、クリスティーナが必死で頑張っているのを見ていたから我慢した。我慢した分、会えるときは反動ですごく甘えてしまったけれど。
ずっとクリスティーナの側に居たい。この気持ちは、家族愛だけじゃないとすぐに気付いた。家族愛ならば、兄上が留学してたときも同じように寂しく思ったはずだ。だけど、兄上の時はただ頑張れと思っただけだ。クリスティーナのように身を引き裂かれるような寂しさなど感じなかった。
もしクリスティーナが聖女候補に選ばれていなかったら、今も普通に姉として思っているだけだったかもしれない。けれど、俺はもう気付いてしまったのだ。俺にとってクリスティーナは特別な女性なのだと。
それでも、クリスティーナの気持ちを優先させたかった。だから、クリスティーナが決意をして隣国へ行くというのなら、我慢すべきだと思った。結局、実際にクリスティーナがいなくなった屋敷の空虚さに耐えかねて、すぐに迎えに行ってしまったのだけれど。
幸運にも婚約破棄されていて、クリスティーナは屋敷に戻ってきた。もう他の男のものになることはないのだと安堵していた。していたのに……。
サンジェムという男が出現した。しかも、年上で、落ち着いていて、俺が噛みついても笑顔でいなしてくる。余裕のない俺と全然違う。男として、敵わないと思った。
しかも、正式ではないかもしれないが、婚約を匂わせるような雰囲気だった。
「今のままでは、クリスティーナを確実に取られる」
どうすればサンジェムに勝てる?
すぐに俺が優位に立つにはどうしたらいい?
俺は必死に考え、賭に出ることにしたのだった。
俺の幼い頃の記憶はおぼろげだ。そんなうっすらな記憶の中で、母親なのかは分からないが、女の人と何かから逃げるように旅をしていた。
そして、旅の終わりにたどり着いたのはローセン家だった。あたたかな屋敷で、お腹いっぱいにシチューを食べたのを覚えている。そして、一緒にいた女の人は力尽きたように動かなくなった。泣きわめく俺を、抱きしめてくれたのはクリスティーナだった。
俺の新しい人生は、クリスティーナから始まったんだ。
俺が不安になると、すぐに気がついて、大丈夫だよって頭を撫でてくれた。突然現われた俺を、家族だと、自分の弟だと、本気で可愛がってくれた。
だから、本当は天涯孤独な俺なのに、寂しいなんて思わずにいられたのは、クリスティーナがいたからだ。
でも、彼女が聖女候補に選ばれてからは、いつも一緒というわけにはいかなかった。寂しくて、ずっと家に居て欲しいと駄々をこねたかったけれど、クリスティーナが必死で頑張っているのを見ていたから我慢した。我慢した分、会えるときは反動ですごく甘えてしまったけれど。
ずっとクリスティーナの側に居たい。この気持ちは、家族愛だけじゃないとすぐに気付いた。家族愛ならば、兄上が留学してたときも同じように寂しく思ったはずだ。だけど、兄上の時はただ頑張れと思っただけだ。クリスティーナのように身を引き裂かれるような寂しさなど感じなかった。
もしクリスティーナが聖女候補に選ばれていなかったら、今も普通に姉として思っているだけだったかもしれない。けれど、俺はもう気付いてしまったのだ。俺にとってクリスティーナは特別な女性なのだと。
それでも、クリスティーナの気持ちを優先させたかった。だから、クリスティーナが決意をして隣国へ行くというのなら、我慢すべきだと思った。結局、実際にクリスティーナがいなくなった屋敷の空虚さに耐えかねて、すぐに迎えに行ってしまったのだけれど。
幸運にも婚約破棄されていて、クリスティーナは屋敷に戻ってきた。もう他の男のものになることはないのだと安堵していた。していたのに……。
サンジェムという男が出現した。しかも、年上で、落ち着いていて、俺が噛みついても笑顔でいなしてくる。余裕のない俺と全然違う。男として、敵わないと思った。
しかも、正式ではないかもしれないが、婚約を匂わせるような雰囲気だった。
「今のままでは、クリスティーナを確実に取られる」
どうすればサンジェムに勝てる?
すぐに俺が優位に立つにはどうしたらいい?
俺は必死に考え、賭に出ることにしたのだった。