Moonlight−月光−
第0章 PROLOGUE
・*・
―数年前―
いつのことなのかも、どこだったのかも、もう覚えていない。
けど、確かその日は珍しく雪が降っていたんだ。
――男の子が、ないてる。
降り積もる雪なんて関係なしに男の子は地べたに座りこんで、独り、泣いていた。
どうしたの?
あなたはだあれ?
なんでないてるの?
曖昧な記憶。
男の子がなんで泣いているのか、聞いたはずなのに少しも覚えていない。
そのあと、男の子にかけてあげた言葉も思い出すことができない。
でも、どうしてか今でもわからなけどあの男の子に泣いてほしくなかった。
笑ってほしいと心から思ったんだ。