自殺教室
奈穂は無意識の内に一浩へ視線を向けていた。
この4人の中では一番目立つ、派手なタイプの一浩だ。

一番ナイフを持っていそうな雰囲気だった。


「違う、俺じゃない」


奈穂からの視線に気がついて一浩が左右に首を振る。


「そもそも俺たちは何も持たずにここで目が覚めただろうが」


そう言われればそのとおりだ。
みんな普段持ち歩いているものをなにも持っていなかった。

ハンカチすらなかったのだから、4人のうちの誰かが持ち込んだ可能性は少ない。


「気味が悪いね」


珠美はそう呟くとすぐにナイフを教卓の上に戻した。
普段持っているはずのものがなくて、ないはずのものがある。
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