自殺教室
またなにかされたのかもしれない。
奈穂はゴクリと唾を飲み込んですぐに千秋から視線を外した。

なにも気がついていないフリをして自分の靴を取り出し、履き替える。
そこで千秋は上履きのままなことに気がついた。

下駄箱へ視線を向けると、千秋の靴がなくなっている。
一浩がどこかに隠すか、捨てるかしたに違いない。

それを千秋はずっと探していたんだろう。
たった1人で。

一瞬胸がズキリと痛む。
こんなにちゃんと目撃してしまってそのまま帰るのはさすがに気がひける。

せめて『大丈夫?』と、声をかけるべきだ。
頭では理解している。

けれどここで声をかければ、今度は自分の身に恐ろしいことが起こりそうで怖かった。
もしも千秋に声をかけているところを一浩に目撃されたら?

次のイジメのターゲットは自分になるかもしれないんだ。
< 112 / 165 >

この作品をシェア

pagetop