自殺教室
豊が震える手でフルーツを手渡す。
千秋の母親はそれを大切そうに両手で受け取った。


「ありがとう。千秋はまだ目覚めたばかりなの、ちょっと話はできそうにないんだけど、顔だけ見ていく?」


その申し出に4人は黙り込んでしまった。
千秋が目覚めた時、この4人が近くにいるとわかったらどう感じるだろう?

またイジメられるかもしれないという不安、そしてすでに味わっている恐怖を思い出してしまうかもしれない。
そう思うと、勢いだけでここに来てしまったことを後悔し始めていた。

あのときはすぐにでも千秋に謝るべきだと思ったけれど、まさかまだ目覚めていなかったなんて、想像もしていなかった。


「いえ、俺たちはこれで帰ります。また落ち着いたら来ますから」


豊が丁寧な言葉を述べて、4人は病室を後にしたのだった。
< 133 / 165 >

この作品をシェア

pagetop