自殺教室
「どうぞ?」


ベッドから降りるには松葉杖が必要だ。
千秋は奈穂達を確認することなく、そう答えた。

一浩の手が戸の伸びる。
奈穂はゴクリと唾を飲み込んで緊張をごまかし、珠美は豊の手を強く握りしめる。

そして一浩は戸を開けていた。
スライド式の戸は音もなくスムーズに開く。

ベッドの上で突然の来客に驚いていた千秋が、一浩の顔を見た瞬間表情をこわばらせた。
それから次々と入ってくるクラスメートたちに今度はとまどいの表情を浮かべる。


「みんな……来てくれたんだ」


千秋が無理をして笑っているのがわかって、奈穂の胸が痛くなった。


「ごめんな、俺の顔なんてきっと見たくないと思うけど」

「そ、そんなことないよ」


一浩の言葉を否定しながらも、その笑顔は軽くひきつった。
このメンバーに会うことが千秋にとってストレスになっていることはわかっている。

だから、目的は早く済ます必要があった。
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