自殺教室
それでも見つからなくて日が傾いてきた。
帰る時間が遅くなれば心配をかけてしまう。

なにがあったの?
と、容赦ない質問が飛んでくることも安易に想像できた。

だから千秋はこの日上履きのままで外へ出たのだ。
外はオレンジ色に染まっていて、公園で遊んでいた小学生たちも帰る時刻になっていた。

靴がないことを両親にどう説明しよう。
なにか、いい言い訳はないだろうか。

考えながら歩いていると、ついぼーっとしてしまった。
いつの間にか目の前に横断歩道が迫ってきていて、赤信号になっていた。

千秋が慌てて足を止めて左右に頭を振ってしっかりさせた。
とにかく家に帰って、それから考えよう。
明日はいていく靴は別のものを出してきて……。


「お前、ふざけんなよ!」


不意に後ろから聞こえてきた怒号に体が震えた。
それはさっき公園から出てきた子供たちの悪ふざけする声だった。

だけど今の千秋にはその声が一浩の怒号に聞こえたのだ。
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