自殺教室
「奈穂、セーフ」


後ろの席の友人が笑いながら声をかけてくるので、奈穂は同じように笑っておいた。
明日からはもう少し早くこなきゃな。

そう思ってカバンを机の横にひっかけたタイミングで担任の男性教師が入ってきた。
その表情は普段よりも険しくて、自然と教室内に緊張感が走った。

なにかあったのだろうということは、その雰囲気ですぐに伝わってくる。
先生は朝の挨拶もそこそに、神妙な面持ちで教室内を見回した。


「もう連絡が言っている生徒もいると思うが、昨日の放課後天野が交通事故に遭った」


その説明に奈穂は目を見開いた。
今、初めて知った情報だった。

千秋と仲が良かった数人の生徒たちへ視線を向けると、彼女たちはうつむいたり目元にハンカチを当てたりしている。


「静かに」


突然の事故の報告にざわめく教室内を鎮めるために、先生が声を張る。
それで教室内はすぐに静かになった。


「天野は今入院中だ。みんなも、気をつけるように」
< 16 / 165 >

この作品をシェア

pagetop