自殺教室
奈穂に助け舟を出すように口を挟んだのは豊だった。
全員の視線が豊へ向かう。


「千秋はすでに死んでいて、その復讐でここに閉じ込められたとか」


『復讐』という言葉に奈穂は眉間にシワを寄せる。
千秋から復讐される覚えはないし、そんなことをした覚えもない。


「復讐ってなに?」


珠美の声が震えている。
もしかしてなにか心辺りでもあるんだろうかと奈穂が顔を向けるが、珠美はただ今の状況を怖がっているだけみたいだ。


「なにが復讐だよ。バカなこと言うなよ!」


一浩が豊へ向けて怒鳴る。


「可能性を考えただけだろ? なんでそんなに怒るんだよ」

「そもそも千秋はまだ死んでない。復讐でこんなことできるわけねぇだろ!」


男子同士の激しい言い争いに耳を塞いでしまいそうになる。
奈穂は勇気を振り絞ったふたりの間に割って入った。
< 19 / 165 >

この作品をシェア

pagetop