自殺教室
「ダメ。全然反応がない」


奈穂と珠美でしばらく声をかけ続けてみたけれど、それは無駄に終わった。
そもそも、本当にカメラが設置されているかどうかもわからない。

ふたりは力なく椅子に座り込んで息を吐き出した。
窓の外はまだ真っ暗で、夜明けまでに時間がある。

ここに人が来るまでに何時間もある。


「無駄な体力は使わない方がいいかもしれないな」


そう言ったのは一浩だった。
一浩はさっきから床に這いつくばってなにかをしていた。

大きな音もしていたから、気にはなっていたのだ。
奈穂が近づいてみると、一浩は床板を一枚剥がしているのが見えた。

さっきのナイフを使って起用に剥がしたようで、そのため大きな音もしていたみたいだ。
しかし、剥がれた床板の下にはなにもなかった。

普通、そこには1階の教室の天井が存在しているはずなのに、真っ暗な闇が広がっている。


「なにこれ……」


奈穂は全身がゾクリと寒くなるのを覚えて自分の体を両手で抱きしめた。
剥がされた床の下はすべてを飲み込んでしまいそうな闇。

その中に手を突っ込めば、たちまち引きずり込まれてしまいそうだった。
こころなしか、冷たい空気が流れ出て来ているようにも感じられる。
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