自殺教室
そう思うけれど、もう遅い。
一浩が怒鳴っているだけでめんどうだと感じて、奈穂はそのまま家に帰ってしまったのだ。


「でも、千秋がカンニングしたからってどうしてイジメたの?」


まだ半信半疑のままだったけれど、これでは話が進まないので珠美がそう質問をした。


「俺は……俺だって、ずっと勉強を頑張ってきた。でも、少しサボったらすぐに追い越される。俺はたぶん、勉強に向いてないんだ。成績はいつも悪くて、親には説教されてばっかで。そんな中千秋はいつも学年上位ですげぇなって思ってた。尊敬してたんだ」


その言葉には偽りがないのだろう。
一浩は悔しそうに下唇を噛み締めた。


「それなのに、千秋の成績は全部カンニングして得たものだったんだ! 俺がどう頑張っても手に入れられなかったものを、あいつはカンニングで手に入れてたんだ! そんなの許せるか?」


奈穂は左右に首を振った。
きっと、許せない。

自分が一浩の立場であれば、千秋を恨んでしまうかもしれない。


「だけど私はやっぱり千秋がカンニングしてたなんて信じられない」
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