自殺教室
今の『ごめん』に込められている意味は、考えたくなかった。


「ごめんなさい……」


珠美も震える声で呟き、床に座り込む。


「待ってよみんな、なに言ってるの」


絶対に他になにか方法があるはずだ。
こんなひどいことをする必要はない。
そう思って一浩に近づこうとしたとき、一浩が振り向いた。

ナイフの先端は奈穂の方へ向いていて、奈穂はひるんで立ち止まる。


「俺に近づくな。あまり、見たくもないだろ?」


その言葉に返す言葉もなかった。
一浩はもう覚悟を決めているんだ。

そう理解すると、奈穂はもうこれ以上足をすすめることができなかった。
一浩がナイフを自分の首元へ持っていく。

奈穂は無意識の内に視線をそらせていた。


「俺が死んで時間が経過したら、ちゃんと死体を処理してくれよな」


一浩はそう声をかけると右手に力を込めた。
最初にチクリと痛みが首筋に走る。
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