自殺教室
その言葉に棘を感じてあとずさりをする。


「私は大丈夫。誰も相手にしないから」


更に続けられた言葉に返事ができなくなってしまった。
奈穂と珠美は普段それほど仲がいいわけではないから、珠美が自分の容姿をコンプレックスに感じていることなんて知らなかった。

悪気はなかったといえ気分を悪くさせてしまった奈穂はそっと珠美から距離を置いた。


「女子は送ってあげるよ。それから帰っても大差ないし」


そう提案したのは豊だった。
男子が一緒なら真夜中に歩くことも悪くないかも知れない。

奈穂は内心ホッとする。


「俺は真っ直ぐ帰るぞ。付き合ってられねぇから」


一浩は相変わらず一匹狼で協調性はないらしい。
普段の学校生活からしてそういう態度だから驚きはしないけれど、こんなときくらい協力してもいいのにと思ってしまう。

そんな不満が顔に出ないように奈穂は豊へ笑みを向けた。


「ありがとう。お願いできる?」
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