自殺教室
☆☆☆

「やーい! お前っていつもトロいなぁ!」


それは一浩が小学校4年生の頃だった。
同級生よりも体が一回り小さな一浩は、いじられるターゲットになることが多かった。


「返してよ!」


同級生に奪われた体操着袋を奪い返そうと、必死で手をのばす。

けれど同級生と一浩は一回りも体格差があり、どれだけジャンプして見ても、伸ばされた手に掴まれている袋には届かなかった。


「チービ! そんなんだから女子と間違われるんだよ!」


よく日焼けしている同級生に対して、一浩は華奢で色白だった。
元々あまり日焼けしないタイプで、成長も遅かったことから本当に女子と間違われることも多かった。

それは一浩が一番気にしていたことだった。
今なら男だからって男らしくしていないといけないことはないんだとわかる。

だけど当時の一浩はまだ小学生で、女みたいだと言われて笑われることが悔しくて仕方なかった。
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