自殺教室
「返せよ! 返せ!!」


それでも手は届かない。
どれだけ頑張っても追いつけない。

クラスメートたちはそれを見てみんなで笑っている。
一浩が叫べば叫ぶほど、おもしろそうに笑う。

一浩の体操着袋はまるでボールみたいにあっちにこっちに投げられて、そのたびに一浩は走り回った。


「返せってば!」


両手を伸ばしてつかもうとした瞬間、今度は足をひっかけられた。
派手に転んであちこちに痛みが走る。

けれどそれを助け起こす生徒はいない。
一浩がこけた瞬間大きな笑い声が教室内に沸き起こった。

みんなが一浩を見て笑っている。
見下して、蔑んで、バカにして、笑っている。

一浩よりも小柄な女子生徒もみんなと同じように笑っていた。
この世界では強い者が勝って弱い者が負けるんだ。

それを、このときに一浩は知った。
だったら強くなってやる。
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