自殺教室
「なにこれ、なんで!?」


安堵したのもつかの間、珠美が混乱した声を上げる。


「豊、とにかくナイフを置いて」


奈穂が静かな声で言うと、豊はようやく諦めた様子でナイフを教卓の上に戻した。
寸前のところで止まったと思っていたけれど、豊の首筋には小さな傷跡ができていた。


「ただ自殺をするだけじゃダメってことかもしれない」


一浩のときのことを思い出すと、きっとそうだと思えた。
自殺する前に自分の罪を認めた発言をしないといけない。

じゃないと死ぬこともできないのかもしれない。


「そ、それじゃあもう朝になるまで待とうよ! こんなこと、する必要ないじゃん!」


珠美が叫ぶ。
確かに、こんなことに振り回されているくらいならなにもせずに朝が来るのを待った方がいい。

だけど、そうできない理由があった。


「朝が来るならとっくの前に来ているはずだよね?」
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