自殺教室
「豊、血が……!」


奈穂の言葉に珠美も駆け寄ってきた。


「さっき、ちょっと切れてたんだ。大丈夫だと思ったけど、思ったよりも傷が深いのかもしれない」


豊は荒い呼吸を繰り返しながら言う。


「このままじゃまずいよ。出血をどうにかしないと!」


そういうものの、この教室内にはなにもない。
教科書もノートも体操着もなにもない。

珠美が弾かれたように教卓へ向かい、ナイフを手に取った。


「珠美なにするの?」


奈穂が咄嗟に声をかける。
珠美は返事をせずにナイフでスカートの裾を切り裂いた。


「これで止血して」


スカートの切れ端を受け取った豊はそれを傷口に押し当てた。


「ねぇ珠美、ちょっと」


青ざめている豊から距離を取って奈穂は気になっていたことを話しだした。


「豊がこのまま死んだりしたら、どうなると思う?」

「やだ、そんなこと考えたくない」


珠美は左右に首を振る。
< 61 / 165 >

この作品をシェア

pagetop