自殺教室
気持ちはわかるけれど、今は目をそらしていてはいけない。


「一浩は千秋が言っていた手順を踏んだから外に出られたのかもしれない。でも豊は違う。死んだからって外に出られるとは思えないよ?」


奈穂の言葉に珠美がしゃくしあげた。
さっきから頬を涙が伝い落ちている。
自分でも制御できないのかそれは次から次へと流れ落ちた。


「じゃあ、豊はどうすればいいの?」

「ここにいるってことはなにか告白しないといけないことがあるはずだよ。それを、言ってもらう。そうすればきっと、豊も外へ出られるんだと思う」

「本当に? 一浩は本当に外に出られたと思う?」


その質問に奈穂は答えられなかった。
でも、今は千秋の言葉を信じる以外に方法はない。


「一浩の体は教室から消えたよね。だからきっと出られたんだと思う」

「それじゃどうして一浩は迎えに来てくれないの?」

「それは……」


きっと、ここが異空間だからだ。
現実の学校じゃないから、一浩は助けたくてもここへ来ることができずにいる。

そう、思いたかった。
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