自殺教室
それをそのまま珠美に伝えると、珠美はうつむいて左右に首を振った。


「そんなのただの都合のいい願望じゃん」

「そうだけど、でもそう思わないとやっていけないじゃん!」

「私はそんなの信じない。少しずつでも時間は進んでるんだから今のままでいい」


奈穂はまた時計に視線を移動させる。
3時6分。

全然進んでいない。
このまま朝になるのを待つことなんてできない。
ここへ来てから飲まず食わずで、トイレにだって行けていないのだ。

これほど歩みの遅い時間の中、どれだけ我慢できるかもわからない。


「珠美、どうしてさっきから否定的な意見ばかりなの?」


聞くと珠美は一瞬ギクリとしたように体を震わせた。
手の甲で涙を拭って「別に、否定的じゃないよ。こんな、わけのわからない空間だから保守的にもなるよね?」と言った。
そうなのかもしれない。

だけどさっきから会話をしていると、まるでここから出たくないようにも感じられてきてしまう。


「本当にそれだけ? 早く外へ出たいよね?」
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