自殺教室
☆☆☆

豊と千秋は同じクラスというだけで大きな接点はなかった。
朝と帰りに挨拶を交わすくらいの関係だ。

千秋が自己に遭う一ヶ月前、豊は放課後1人でデパートへやってきていた。
駅前にある大型のデパートで1階は香水や化粧品店。

地下には量り売りのお惣菜が置かれているようなデパートだ。
平日の夕方は地下の売り場はにぎやかだったけれど豊がいる1階のコスメコーナーはそれほど客足は多くなかった。

それでも時折スーツ姿の女性たちが買い物をしに訪れる。
仕事が終わってから買い物へ来たようで、その表情はどれも緩やかだった。

化粧品店ではその場でメークもしてくれるようで、これからデートの予定がある女性たちが数人集まってきていた。
こんなところに自分がいるなんて場違いだと、豊もちゃんと理解していた。

でも今日はどうしてもここに用事があってきたんだ。
豊は化粧をしてもらっている女性たちの後ろを通り過ぎて、香水売り場へと向かった。

そこはひと気が少なくて店員も1人立っているだけだった。
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