自殺教室
陳列されている香水の瓶はハート型だったりダイヤ型だったりして、見ているだけで楽しい気持ちにさせてくれる。
それぞれの香水の前にはその香水を染み込ませたコットンが小瓶に入れられて置かれていた。

購入者たちはこれの匂いをかいでどの香水を買うのか決めるみたいだ。
香水には縁のない豊は初めてそれを知った。


「高いな」


香水の値段を見て思わず呟く。
一番安い商品でも2万円はするブランドものだ。

ひと気が少ないのも頷けることだった。
たった1人しかいない店員はさっきから伝票整理をしている。

お客さんもいないし、中学生男子が好奇心で商品を見ているとしか思わないのだろう。
それは豊にとっては幸いだった。

豊がこれからしようとしていることは決して誰にもバレてはいけないことなんだから。
豊はお目当ての香水を見つけるとその場で立ち止まった。

購入するつもりなどないのに、香水の金額を確認する。
それは3万5千円する商品だった。

思わずゴクリと唾を飲み込んで周囲を見る。
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