自殺教室
☆☆☆

「ねぇ、ちょっと」


デパートを出た瞬間後方から声をかけられて豊の心臓は跳ね上がった。
全身に冷や汗が流れ出る。

逃げろ。
走れ。

頭ではそう思うのに、体は言うことを聞かずに硬直してしまう。
バレた。
終わりだ。

制服姿で万引なんてしたんだから、学校にも家にも通報されてしまう。
豊の脳内が絶望に支配されそうになったとき、声をかけてきた女性が回り込んできた。


「えっ」


豊は思わず声を出し、そして全身が脱力していくのを感じた。
豊に声をかけてきたのは店員ではなく、同じクラスの千秋だったのだ。

てっきち万引がバレて店員が追いかけてきたのだと表板豊は膝から崩れ落ちそうになった。


「な、なんだお前か」


思わず安堵の声が漏れる。
けれどいつまでもお店の前にいるわけにはいかない。

豊のカバンの中にはついさっき盗んだばかりの高級な香水が入っているのだから。
本当なら千秋だと認識した次の瞬間には逃げ出したかった。
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