自殺教室
店はどんどん遠ざかっているのだから、帰る気に決まっている。


「なんでそんなことするの? それって女性ものなのに、どうして必要なの?」


答えないのに質問ばかりが飛んできてイラつく。
豊は1度振り向いて千秋を睨みつけた。

それでひるんで帰るかと思ったが、千秋はするどい視線をこちらへ向けたままで更に追いかけてきたのだ。


「女性ものの香水をつけるのがおかしいとか、そういうことを言ってるんじゃないよ? ううん、むしろそういう楽しめる趣味がるのはいいことだと思う。でも……盗んだよね?」


『盗んだ』と言われた瞬間足を止めてしまいそうになり、逆に早足になった。
家まではあと少しだ。

家に入ってしまえばさすがの千秋だって諦めてくれるだろう。


「今ならまだきっと間に合うよ。売り場に戻した方がいいよ」


すぐそばに家が見え始めてホッと息を吐き出した。
千秋はいつまででも豊の後ろをついてきて、豊はチッと舌打ちをした。
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