自殺教室
玄関の鍵をポケットから取り出すと、千秋も足を止めた。
大きな一軒家の前で足を止めた豊を、怪訝そうな表情で見つめている。

そう、豊の家は決して貧乏ではなかった。
一般家庭と比べてみれば裕福な方だと思う。

そんな豊が万引をしたことが不思議だったんだろう。
家がどれだけ裕福だって、中学生の豊がなんでもかんでも手に入れられるわけじゃない。

一月のお小遣いは決められていて、その中でやりくりをしている。
それに、香水に興味なんてない豊が両親に香水をねだるのは不自然だった。

絶対になにか聞かれるに決まっている。
だから豊は高級な香水を盗むことにしたのだ。
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