放課後はキミと。

休日はキミと。


補習、最終日。
テスト範囲も授業ではすべて終えて、来週から本格的なテストとなる。
しかも英語は月曜日。初日だ。

英語の科目はいずれも初日で、あのくそ担任ほんとに進級さす気あんのかといいたい。

その日もいつもと変わらない補習だった。
スパルタで、容赦がなくて。
寂しさを感じるのは、あたしだけなのかもしれない。

「んー今で5割か。まあ、テストは多分、大丈夫だろ」

返って来た涼村くん特製のテストには54点の文字。
最初の信じられない点数に比べたら、ましすぎる。
涼村先生のお墨付きをいただいてあたしも一安心。これで留年は免れる……と信じる。

「んじゃ次復習ね」
そのまま復習へ移って、あたしはそそくさとペンを取り出した。
涼村くんが話し始めたのを聞きながら、あたしはつい涼村くんを見てしまう。


数センチ先の涼村くんのさらさらな髪からは、ふわりと爽やかな匂いがする。
好きと気づいた日から、この距離にある涼村くんを見るたびに心臓がうるさい。

日を追うごとに、どんどん好きになる。
戻ろうとしても、忘れようとしても、もうできない。

あたしの心に君臨しているんだ、涼村くんの存在が。


「……聞いてる?」
気付けば眉根に皺を寄せた涼村くんが、不機嫌そうにあたしを見ていた。

あ、やば。
聞いてなかった。

曖昧に笑うと、丸めた教科書でパンッと頭をしばかれた。
「いい度胸だな。やる気あんのかてめえ」
「……すみません」
久しぶりにどきつい言い方をされて叩かれた箇所をおさえながら、縮こまる。

見惚れてましたなんていえません。

涼村くんは大げさにため息をついて、ま、いいけど。とつぶやいた。
「んじゃ最初から説明するから、もういっかい聞けよ」


あ、優しい。
なんだかんだいいながら、涼村くんはもう一回説明してくれる。

そういった優しさもどうしようもなく好きだと思う。
溺れてるな、あたし。


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