放課後はキミと。
なんとか説明を理解して、間違えた問題を解くと、そろそろ帰る時間になっていた。
今日は一つ、決めていることがあった。
言うタイミングをうかがっていたが、なかなか見つけられなくて、困っている。
「じゃあ今日は終わり」
「あ、あの…!」
勉強道具を片付け始める涼村くんにあたしはいまだ!と思って意を決して声をかけた。
「どうかした?」
「べ、勉強しませんか。日曜日」
何度も頭の中で復唱していた言葉を思い切って告げる。
「バイトないの?」
「さすがにいれてません」
入れてたら涼村くんに殺されるかもと思ったし。
「ふうん。いいよ」
あっさりと了承されて、それだけで気持ちが高揚する。
「てか俺も言おうと思ってた。勉強しないか」
「え、そうなの?」
「うん」
涼村くんも誘おうと思ってたという事実に、さらに気持ちが高揚して、どきどきする。
そして惜しいことをしたと思った。それだったら涼村くんに誘ってほしかったなという欲が沸く。
「んじゃ、日曜日駅前に10時ね。がっつり追い込みかけるから」
そんな浮足立っていたあたしに気づくこともなく、涼村くんは意地の悪い顔でにっこり笑った。
その笑顔にあたしの血の気がさあっと引いてく。
もしかするとあたしは、とんでもないお誘いをしてしまったのでは?
だって休日に涼村くんに会えるなんてこのタイミングしかないと思ったんだもん。
休日の涼村くんに会えるうれしさとスパルタ大魔神の涼村くんを天秤にかけると、イーブンくらいにはなるかもしれない。
「……帰るよ?」
物思いに耽けるあたしに、涼村くんはすでに帰る準備が出来上がっていた。
「あ、うん!」
あたしはすぐに変える準備を整えて、二人で廊下に出た。
二人で並んで歩くのも、もしかしたら今日が最後かも。
ちらりと涼村くんをうかがうと、そこにあるのはやっぱり人一個分の距離。
もし少し距離を近づければ、恋人同士みたいにみえるのかな。
そんな思い切ったこと、もちろんできないんだけど。
校門前で涼村くんは足を止めて、
「あ、今日送れなくて。といっても前も送れなかったし、結局一回も送れないな。自分で言ったのにごめん」
片手を顔の前にもってきて、詫びてくる涼村くん。
「全然いいよ。気持ちだけで十分です」
「ごめんな。じゃあまた日曜」
「うん。またね」
そのまま手を振って、あたしたちは分かれた。
さみしいけれど、本当の恋人じゃないからわがままは言えない。
日曜日に会えるし。と気持ちを持ち直して、あたしは帰路につこうと歩き出した。