放課後はキミと。

***


日曜日。

あたしは全身鏡の前に下着姿でいた。

理由は、もちろん。
「服……どうしよう……」

今日の勉強会のための服選びである。
バイトに明け暮れるあたしは、基本的にラフな格好しかしない。
ジーンズにTシャツが楽だし、主なスタイルだ。

友達と遊びに行くときに着るような少し可愛い服も、中学から着てるやつだし…。
これは、女子高生として、いや女子として問題なのでは?

今度プチプラの店で買い物しよう。
反省をして強く心に誓うけど、今日はどうしよう。

かれこれ悩み続けて20分はたっている。

でもあんまり気合入りすぎている服もひくよね?
だってあくまで勉強会だし。
そもそも気合入りすぎてる服もないんだけど……。

そういえば涼村くんにコンビニで会ったときに一回私服みられてるな。
でも、でもちょっとくらい可愛いと思われたい……。

複雑な乙女心ナノデス。

「おねえちゃん、さっきからなにしてんの?」
下着姿で鏡の前に立つ姉を心配してくれたのか、気になったのか二つ下の妹の(あい)がひょこっと顔をのぞかせた。

あたしは突然でてきたもんだから危うく叫びそうになった。

「なんでもない! なんでもないから!!」
藍にこの状況を知られることも恥ずかしく、不自然な反応をしてしまう。

その反応と服の惨状でなにかを察したらしく、「はっはーん」と今どき漫画でもみないようなことをいってにやにや笑った。

「可愛い服、貸したげよっか?」

簡潔だが的確な言葉に、うっと心が揺らぐ。

藍のほうが服のセンスはいい。
そしてお小遣いを貯めて、ちょこちょこ服を新調しているのも知っている。

いや、でもここは姉としてのプライドがありますから!

「大丈夫!」
「おねえちゃんの服、はっきりいって全部色気ないよ。中学の頃の服とか、色褪せてるし」

うぐっ。なんてはっきりいうのか。

気づいていないフリをして目をつぶっていたのだが、確かにプリントされているところが少し色褪せている。
お金ないって思われる⋯⋯?

「色気とか、いらないし」

それでも姉としてのプライドが邪魔して意地をはってしまう。

「ふぅん? ほんとにいいの? 知らないよ?」

にこにこ笑う藍は、なんて姉の気持ちを察するのが上手いのか。
姉としてのプライドと涼村くんに可愛く見られたい気持ちの天秤が揺れて、涼村くんに可愛く見られたい気持ちが勝ってしまう。
なけなしのプライドも崩れて、あたしは小さくうなだれたのであった。


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