放課後はキミと。
「次古典な」
そういって差し出される答案用紙。
こんなにどきどきしてるあたしと違って、彼はとても冷静でいつも通り。
それがなんだか、少し悔しい。
「うん」
そんなこと、いえやしないんだけど。
古典は暗記してしまえばバリエーションも少ないし、テスト範囲も少ないから、そんなに困らなかった。
涼村くんも今回のテスト範囲プラス基礎知識だけだったから。
問題は割と解けた。
返ってきた点数は80点だ。
「……うれしい」
高校になってこんな点数拝めてない。
「いや、本番でそれくらいとって喜べ」
「……がんばります」
喜びに浸ってたけど、本当にそのとおりで。
油断は禁物だなあ。
「……涼村くんって、苦手な教科とかないの?」
「あんまないけど、しいてあげるなら美術、かな」
何の気なしに問いかけてみると、言いづらそうに逡巡した後、ぽつりとそういった。
び、じゅつ……?
「高校は選択だから、とってないけど」
そういえば涼村くんは音楽をとってたっけ。
あたしはふと思いついてルーズリーフをそっと彼の手元に置いた。
こちらを見遣る彼に、へへと笑う。
「ぜひ、なにかここに書いてください。涼村画伯」
そういったあたしに、明らかに固まって、涼村くんは唇を引き結んだ。
「あたしは猫が好きです」
言い募ってみると、教科書を丸める姿が。
危険を察知したあたしは、丸めた教科書が来る前に避けた。
ふふん。と胸をはるあたしに、涼村くんは腕をつかんでパンッと景気よく頭を叩いた。
……くそう。
狭いんだよ、ここ。
「あほなこといってないで、勉強しろ」
「……けち」
「なにかいったか?」
「いえ、なにも!」
オーラが変わった彼に、自分がかわいいあたしはさっさと問題を解くことにした。
主に勉強の約束だったから、勉強の疑問に関すること以外はそれ以降会話もせず。
いつもの学校の補習とあまり、変わらなかった。
それでもやっぱり、この距離感とか私服とかは新鮮で。
あたしの胸は小さいながらもきゅんきゅんいいっぱなしだった。