放課後はキミと。

気づいたときには、公園を飛び出していて自転車を漕いでいた。
夜風がピリピリと顔を刺激して、それから逃れるようにマフラーに顔を埋めた。
何度もさっきの光景がフラッシュバックして、瞼から溢れ出る雫に、唇をかみ締めた。


なにあれ。
なにあれ。

キス、してた。
キス、してたよね?

涼村くんと、佳耶さんだった。

なんで?
付き合うことになった?

もしかして、あれはどちらかが告白をしていて。
両思いになったんだろうか。

あたしが知らない間に、彼の心は、佳耶さんでいっぱいだったの?
もしくは、あたしに出会うとっくの前から、彼の心には佳耶さんしかいなかったの?

次から次へと疑問は沸き起こるのに。
だれも、その答えをくれない。

でもさっきのことは現実で。
涼村くんが好きでもない女の子とあんなことをしないことは、わかってる。
それが、答えなんだ。

痛い。
胸が、苦しい。

この感情、知ってる。
前にも経験した。

二つの影。
それを見ることしかできない、あたし。

あのときと、同じ。
ううん。あのときよりも、もっともっとどす黒い感情が渦巻いてる。

こんな醜い感情を、痛みを、あたしはどこにもっていけばいいんだろう。
どうやって忘れればいいんだろう。


涼村くん



涼村くん



貴方への想いは、膨らむばかりなのに。

貴方との距離は、ずっと遠いまま。




どうすれば、貴方の心に近づけますか?



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