あなたの仮面の下にあったのは

「えっ……最上さん、既婚者に近付いたの？」

翔吾の妻が乗り込んできたことに言葉を失い、固まっていた香奈は、隣にいた先輩の一言で我に返る。先輩の方を向けば、先輩は香奈を軽蔑したような目で見ていた。

「寝取ったってこと？」

「やば。不倫ってやつ」

「すご……。ネット掲示板の修羅場スレに書き込めそう」

ヒソヒソとフロアにいる社員たちが話し、冷たい視線が香奈に突き刺さる。その様子に翔吾の妻も誰が香奈なのかわかったのだろう。部長を押しのけ、香奈に近付いてくる。その目は釣り上がり、鬼のようだった。

「あんたが泥棒猫ね！！」

「違います！！いや、違わなくはないですけど！！翔吾さんは私に「未婚」だって言ったんです！！私、それを信じて……」

「そんな言い訳通用すると思うなよ！！このクソ女！！」

「ッ！」

香奈の頰に痛みが走る。数秒かけて頰を叩かれたのだとわかった。目の前に涙が滲んでいく中、翔吾の妻は怒鳴る。