あなたの仮面の下にあったのは

「慰謝料一括でぶん取ってやるつもりだから、消費者金融にでも借りときなさいよ！！」

そう怒鳴り、翔吾の妻はドスドスと大きな足音を立てながらフロアを出て行く。彼女が出て行った後、フロアは絶対零度の空気が流れ、静まり返っていた。誰も話をしないものの、香奈を冷たく見つめている。

「……」

香奈は何か言わなくてはと口を開くものの、まるで声を奪われてしまったかのように言葉を発することができない。すると、部長に肩をポンと叩かれた。

「最上さん、まさか君がこんな人だったとは知らなかったよ。今日はもう帰ってくれ」

この場所には味方がいない。そう理解した刹那、香奈の目の前は真っ暗になった。



翔吾の妻が会社に乗り込んでから、香奈は自宅謹慎が言い渡された。香奈は必死で既婚者だとは知らなかったと説明はしたものの、誰にも信用されることはなく、食事も睡眠もできなくなっていった。

（何で私、生きてるんだろう……）