相思相愛・夫婦の日常~羽♡兎編~
「━━━━あ、あの!!旦那さん!!」

コマツが追いかけてくる。

「はい?」

「ありがとうございました!助けていただいて」

「いえ、兎ちゃんの為ですので」

「お礼に、お茶でも……」

「結構です」

「少しだけでも!」

「あの!!」

「え?」

「はっきりいいます!
俺、兎ちゃん以外の人、全然!興味ないんで!
あんたを助けたのも“兎ちゃんに嫌われないため”です!
それ以外に、理由はありません!」

「そ、そう…だよね……」

「じゃあ、失礼します」


「━━━━━━どうして羽咲なの?」
去っていく黒羽の背中に訴えるように言った、コマツ。
「は?」
思わず、黒羽は振り返った。

「旦那さんも知ってるんだよね?
羽咲がある人の元・愛人で、その事で事故に遭って子どもが産めなくなったこと」

「だから?」
黒羽の雰囲気が、ズン!と落ちた。

「そんな羽咲を、なんで受け入れられたの?」

「あんたは、本気で人を好きになったことないの?」

「え?」

「あの頃の兎ちゃんは、あのクズのことを“本気で”愛してた。
俺にとっては“クズ”だけど、兎ちゃんにとっては“全て”だった。
不倫が悪いことってことは、兎ちゃんだってわかってる。
不倫なんて、最低だ。
でも!!それでも、想いが止められなかったんだと思う。
好きで、好きで、好きすぎて……兎ちゃんは、苦しんでた。
俺は、兎ちゃんの“その気持ちだけは”わかる。
俺が兎ちゃんの立場だったら、俺だって愛人になってたと思うから。
子どもが産めなくなったこと、兎ちゃんは“罰”だって言ってた。
奥さんや子どもを傷つけ、周りの人達を裏切った罰だって。
だから俺は、その“罪ごと”兎ちゃんを愛するって決めたんだ!
それくらい、兎ちゃんが好きだから。
愛人だったとしても、子どもが出来なくても、俺は“そんな最低な兎ちゃんが”好きだから。
━━━━━━本気で人を愛したら、そうゆうことじゃないでしょ?
一緒に、罪を償っていくってことなんじゃないの?」

「………」
黒羽の言葉に、コマツは何も言えなくなる。

「……………もう二度と、兎ちゃんと関わらないでください」
そんなコマツを見据え言った、黒羽。

「え?」

「“なんで受け入れられたの?”何て言う友達は、友達じゃないです。
兎ちゃんとは、縁を切ってください!」

そして頭を下げ、去っていった。
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