私があなたの隣にいけるまで
私があなたの隣にいけるまで
真っ青な空に、真っ白なわたあめのような入道雲が映える。
夏休みだというのに、グラウンドでは運動部が元気よく活動している。
照りつける太陽をものともせず、部活動に打ち込む彼に、私は目が離せなくなっていた。
陸上部、なのかな。ひたすらに走っては、タイムを測っているように見えた。
私がいるのは音楽室。涼しくて快適で、真夏の暑さとは無縁の世界。この音楽室でピアノの練習をするのが、一番集中できていい。
ピアノのコンクールが近い。これまで頑張ってきた成果を悔いなく発揮できるよう、私はピアノを弾き続ける。
ひたすらに弾き続けて、休憩しようと思って窓の外を見た時、グラウンドで走る彼を見付けた。
それから何日も彼の走りを音楽室から見ていた。
真剣に走る姿、タイムに喜ぶ姿、悔しがる姿、部員と楽しそうに笑い合う姿。
そのどれもが魅力的で、わたしはいつしか、名前も知らない彼を気にかけるようになっていた。
ピアノの練習に学校に来ているはずなのに、今日も来てるかな、なんて彼を探すようになってしまった。
今日も彼は暑い中走り続けている。いつもすごく楽しそうだ。
漠然と、いいな、と思った。
好きなものに打ち込む姿勢とか、楽しむ気持ち、彼の人間性にいいな、と思った。
私はいつも遠目から見ているだけで、彼がどんな声で、どんな風に話すのかもわからない。
それなのに、彼を好きだなぁ、と思うことは変だろうか。
どこのクラスなんだろう、同じ学年?先輩後輩?走ること以外にも好きなことあるかな?どんなものに興味を持つんだろう。彼女はいるかな、好きな人は?
彼のことが知りたい。
けれど当然接点なんてなくて、私は今日も音楽室から彼を眺めるだけ。
彼の頑張っている姿を見て、私も負けじとピアノを弾き続けた。
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