ソネットフレージュに魅せられて
第35話
「ゆーきな。今日の放課後、暇?」
雅俊が、校舎に向かう途中、
校門の抜けた坂道で
後ろから雪菜に声をかけた。
左肩にバックを左手で乗せていた。
「え、なんで?」
「だって、今日午前授業で、
午後は部活も休みっしょ?」
「そうだっけ?」
そっけない態度をとる雪菜。
軽いノリの雅俊には、
あまり深入りしないように
した方がいいと同級生からの
アドバイスを真に受けていた。
「雪菜、おはよう。
今日のテスト、私、自信ないんだよね。
勉強してきた?」
「おはよう。緋奈子。
全然、してないよ。」
「何よぉ。そうやって、いつも
雪菜点数高いじゃん。
勉強してない詐欺しないでよぉ。」
緋奈子は、雪菜を左腕で軽く
体当たりした。
「えー。そうかな。
大丈夫だよ。緋奈子なら。ね?」
「え、待って。俺の話はどうなった?」
「あ、ごめん。雅俊くんいたの?
2年の後輩くんは、混ざれない話だよ?
君、彼女いるくせに、
こんなところで油売ってて大丈夫?」
緋奈子はぐさっと弓矢のように
話しかけた。
親友を守りたい一心だ。
「え!? どうしてそれを……。
彼女って、あれは…。」
「雅俊くん?! 何してるの?
浮気しないでって言ってるじゃん。
彼女になったんだから、
放っておかないでよ?」
「あ、あ、あ…。」
彼女と言われる2年の女子は、
雅俊をずるずると
引きずって連れていく。
雅俊の目から涙が溢れ出てきている。
不本意のようだ。
「なんだ、ちゃんといるじゃん。
彼女。」
雪菜はほっと安心する。
「雪菜、早く、教室行こう。」
「うん。」
緋奈子に腕をつかまれて、
昇降口に向かっていく。
雅俊は両踵をひきずりながら、
進んで行く。
彼女と言われる笹川マリンは、
有無も言わせず、
雅俊を連れまわしている。
雅俊ファンクラブから
見事選ばれた子だけあって、
見た目はものすごく美人で、
お人形のようにまつ毛は長く、
髪はサラサラセミロング。
肌は白雪姫のように白い。
ただ、性格に難ありといったところだ。
一緒にいれば、美男美女で
申し分ないのだが…。
「ごめん、笹川さん。
俺、ちょっとトイレに行きたいん
だけど。」
「あ、ごめんなさい。
さすがに彼女ともいえど、
トイレの中までは入れないわよね。」
雅俊は、そう言いながら、
逃げ出すタイミングを
見計らっていた。
「うん、大丈夫。んじゃ、ほら、
予鈴のチャイムも鳴ってるし、
教室、行った方いいよ?」
「あ、そうね。
ありがとう。
んじゃ、休み時間にね。」
同級生で隣のクラス。
フラッシュモブのごとく、告白されて、
断りづらい中で、
イエスと言ってしまってから
3日目。
いつ、別れを切りだそうかを
考えていた。
その彼女に
追いかけまわされてるのを
見ていた凛汰郎が、
雅俊の横を通り過ぎると、
にやりと笑っていた。
「な?!」
その笑みを見た瞬間に怒りが
こみ上げる雅俊だった。
◇◇◇
3年の雪菜のクラスでは今日の分の
授業が終了した。
チャイムが響く。
ガタガタと机といすの音が鳴る。
生徒たちは放課後になり、
ざわざわし始めた。
すると、雪菜は机にバックを
置いたところで
目の前に凛汰郎が近づいてきた。
「昨日は…どうも。」
「あ、うん。
こちらこそ。」
「……あのさ、弓道部の
引退セレモニーなんだけど。」
「あ、そのこと?」
「うん。それ、出るから。」
「あ、うん。そうだよね。
苦手だって言ってたし、無理しないで。
……え?ごめん、出るの?」
凛汰郎はほくそ笑んだ。
「ああ。」
「そっか。後輩たちも喜ぶよ。
せっかく準備してくれてるわけだし。
考え変わってくれてよかった。」
「……行く意味あるかなっと思って。」
「?」
本当は卒業まで残り少ない雪菜との
時間を少しでも長く過ごしたかった
からなんて本当のことは
言えなかった。
にこっと見つめ合って笑った。
「それ、つけてたんだな。」
狼のぬいぐるみがバックの横で
揺れていた。
「あ、うん。
ありがたくつけてたよ。」
手のひらに狼の足を乗せた。
いつもそんなに笑わない凛汰郎が
笑顔を見せた。
「え、何、何?
2人はそういう関係なの?」
ずっと近くの席からしゃがんで
かくれんぼするように
様子を伺っていた緋奈子。
「え、なんのこと?」
頬を赤らめて、逃げるように教室を
出ようとする雪菜。
凛汰郎は、何かを言いかけた。
「どうなのよ。」
「なんでもないよぉ。」
緋奈子と雪菜が絡んでいると、
凛汰郎が後ろを
追いかけた。
「白狼!」
「あ、ごめん。話終わってなかった?」
「…いや、その引退セレモニーの後、
予定なかったら、開けててほしい。」
「えっと、今のところ、何もなかったよ。
わかった。覚えておくから。
んじゃ、明後日だね。」
「ああ。」
手を軽く上げて、別れを告げる。
階段の踊り場で出るタイミングを
失っていた
雅俊が、壁を背中にして
左足を軽くあげてつけていた。
ポケットに手をつっこんで聞いていた。
(明後日か……。)
「雪菜、平澤くんとの関係詳しく
教えてよ。」
「なんでもないってば。」
緋奈子には、本当のことは言ってない。
まだ言えない。
自信が持てない。
まだ告白だってしてないし、
されてもない。
何か進展があったら、
話そうと決めていた。
雅俊が近くにいることも知らずに
雪菜、緋奈子、凛汰郎は
階段をかけおりていく。
教室から続く
廊下から階段は
放課後だけあって帰る生徒たちで
混み合っていた。
雅俊が、校舎に向かう途中、
校門の抜けた坂道で
後ろから雪菜に声をかけた。
左肩にバックを左手で乗せていた。
「え、なんで?」
「だって、今日午前授業で、
午後は部活も休みっしょ?」
「そうだっけ?」
そっけない態度をとる雪菜。
軽いノリの雅俊には、
あまり深入りしないように
した方がいいと同級生からの
アドバイスを真に受けていた。
「雪菜、おはよう。
今日のテスト、私、自信ないんだよね。
勉強してきた?」
「おはよう。緋奈子。
全然、してないよ。」
「何よぉ。そうやって、いつも
雪菜点数高いじゃん。
勉強してない詐欺しないでよぉ。」
緋奈子は、雪菜を左腕で軽く
体当たりした。
「えー。そうかな。
大丈夫だよ。緋奈子なら。ね?」
「え、待って。俺の話はどうなった?」
「あ、ごめん。雅俊くんいたの?
2年の後輩くんは、混ざれない話だよ?
君、彼女いるくせに、
こんなところで油売ってて大丈夫?」
緋奈子はぐさっと弓矢のように
話しかけた。
親友を守りたい一心だ。
「え!? どうしてそれを……。
彼女って、あれは…。」
「雅俊くん?! 何してるの?
浮気しないでって言ってるじゃん。
彼女になったんだから、
放っておかないでよ?」
「あ、あ、あ…。」
彼女と言われる2年の女子は、
雅俊をずるずると
引きずって連れていく。
雅俊の目から涙が溢れ出てきている。
不本意のようだ。
「なんだ、ちゃんといるじゃん。
彼女。」
雪菜はほっと安心する。
「雪菜、早く、教室行こう。」
「うん。」
緋奈子に腕をつかまれて、
昇降口に向かっていく。
雅俊は両踵をひきずりながら、
進んで行く。
彼女と言われる笹川マリンは、
有無も言わせず、
雅俊を連れまわしている。
雅俊ファンクラブから
見事選ばれた子だけあって、
見た目はものすごく美人で、
お人形のようにまつ毛は長く、
髪はサラサラセミロング。
肌は白雪姫のように白い。
ただ、性格に難ありといったところだ。
一緒にいれば、美男美女で
申し分ないのだが…。
「ごめん、笹川さん。
俺、ちょっとトイレに行きたいん
だけど。」
「あ、ごめんなさい。
さすがに彼女ともいえど、
トイレの中までは入れないわよね。」
雅俊は、そう言いながら、
逃げ出すタイミングを
見計らっていた。
「うん、大丈夫。んじゃ、ほら、
予鈴のチャイムも鳴ってるし、
教室、行った方いいよ?」
「あ、そうね。
ありがとう。
んじゃ、休み時間にね。」
同級生で隣のクラス。
フラッシュモブのごとく、告白されて、
断りづらい中で、
イエスと言ってしまってから
3日目。
いつ、別れを切りだそうかを
考えていた。
その彼女に
追いかけまわされてるのを
見ていた凛汰郎が、
雅俊の横を通り過ぎると、
にやりと笑っていた。
「な?!」
その笑みを見た瞬間に怒りが
こみ上げる雅俊だった。
◇◇◇
3年の雪菜のクラスでは今日の分の
授業が終了した。
チャイムが響く。
ガタガタと机といすの音が鳴る。
生徒たちは放課後になり、
ざわざわし始めた。
すると、雪菜は机にバックを
置いたところで
目の前に凛汰郎が近づいてきた。
「昨日は…どうも。」
「あ、うん。
こちらこそ。」
「……あのさ、弓道部の
引退セレモニーなんだけど。」
「あ、そのこと?」
「うん。それ、出るから。」
「あ、うん。そうだよね。
苦手だって言ってたし、無理しないで。
……え?ごめん、出るの?」
凛汰郎はほくそ笑んだ。
「ああ。」
「そっか。後輩たちも喜ぶよ。
せっかく準備してくれてるわけだし。
考え変わってくれてよかった。」
「……行く意味あるかなっと思って。」
「?」
本当は卒業まで残り少ない雪菜との
時間を少しでも長く過ごしたかった
からなんて本当のことは
言えなかった。
にこっと見つめ合って笑った。
「それ、つけてたんだな。」
狼のぬいぐるみがバックの横で
揺れていた。
「あ、うん。
ありがたくつけてたよ。」
手のひらに狼の足を乗せた。
いつもそんなに笑わない凛汰郎が
笑顔を見せた。
「え、何、何?
2人はそういう関係なの?」
ずっと近くの席からしゃがんで
かくれんぼするように
様子を伺っていた緋奈子。
「え、なんのこと?」
頬を赤らめて、逃げるように教室を
出ようとする雪菜。
凛汰郎は、何かを言いかけた。
「どうなのよ。」
「なんでもないよぉ。」
緋奈子と雪菜が絡んでいると、
凛汰郎が後ろを
追いかけた。
「白狼!」
「あ、ごめん。話終わってなかった?」
「…いや、その引退セレモニーの後、
予定なかったら、開けててほしい。」
「えっと、今のところ、何もなかったよ。
わかった。覚えておくから。
んじゃ、明後日だね。」
「ああ。」
手を軽く上げて、別れを告げる。
階段の踊り場で出るタイミングを
失っていた
雅俊が、壁を背中にして
左足を軽くあげてつけていた。
ポケットに手をつっこんで聞いていた。
(明後日か……。)
「雪菜、平澤くんとの関係詳しく
教えてよ。」
「なんでもないってば。」
緋奈子には、本当のことは言ってない。
まだ言えない。
自信が持てない。
まだ告白だってしてないし、
されてもない。
何か進展があったら、
話そうと決めていた。
雅俊が近くにいることも知らずに
雪菜、緋奈子、凛汰郎は
階段をかけおりていく。
教室から続く
廊下から階段は
放課後だけあって帰る生徒たちで
混み合っていた。