ソネットフレージュに魅せられて
第41話
スズメが鳴く少し肌寒い通学路。
持っていたバックを背負いなおして、
駐輪場から昇降口に向かう。
同じように昇降口に向かう生徒が行きかっている。
衣替えがとっくに終わっているのに
いまだに半袖ワイシャツになっている人や、
制服のジャケットではなく、カーディガンを羽織る人がいる。
まだ、朝が少しだけ寒いが、
昼間は汗をかくくらいの天気だった。
後ろから走ってくる音が聞こえてくる。
誰だろうと後ろを振り向くと
何となく予測はついていた。
「雪菜、ちょっと待ってー。」
雅俊が、追いかけてきた。
ジロジロと後輩や同級生たちが見てくる。
さすがは、ファンクラブができるほどのモテ男。
自分に話すだけでこんなに注目浴びるのかと
ちょっと嫌な気分になった。
「何?」
いつものおはようも無しに話す。
「足早いもんな。
あっという間に行くんだから。
俺も今日、チャリで来たからさ。
今追っかけてきたのに…。」
息が荒い。
「だから、何の用事?
ギャラリーができるの嫌だから早くして。」
「え、あー。ごめん。
バックからごそごそと、何かを取り出す。」
透明なビニール袋に入っていた。
「あ、あれ。それって…。」
雅俊は、小さなぬいぐるみキーホルダーを
渡した。狼のキャラクターだった。
凛汰郎に買ってもらっていたぬいぐるみが
取れていたとは気づかずに今、思い出した。
「そう、バックから落ちてたみたいだから
拾っておいた。」
「あー-、ありがとう。」
「泥んこ、ついてて、洗うの苦労したんだぞ。
洗ったのは、ばぁちゃんだけどな。
ペット飼ってるみたいにドライヤーで
乾かしたんだぞ。」
「ふーん…。」
「よ。」
雅俊の後ろから凛汰郎が雪菜に手を振る。
「あ、おはよう。」
「うひゃ!!」
雅俊は凛汰郎に気づいて、びっくりした。
「何、ビビってんだよ。」
「先輩、昨日はすいませんでした…。
俺のせいで、ボロ負けで…。」
「そのこと?
別に毎回期待してないし…。」
「何?ゲームの話?」
雪菜が話の間に入りこむ。
「いつもこいつやられてさ。
負けるんだよね。
俺がレベル高いから強いメンバーが
相手になるんだけどさ。
仕方ないかなって。」
「ごめんね、雅俊、相手してもらって。
何か逆に申し訳ない。
弟も混ぜてもらってるんだよね。」
「そうそう、いやいや、
徹平くんの方、うまいのよ。
悪いけど…。」
雅俊の背中に見えない大きな矢が突き刺さる。
「先輩、キツイっす。
言わないでくださいよ、それ。」
「そお?」
「なんか、2人とも仲いいね。」
「どこが?」
「どこが?」
2人同時に同じセリフを言っていた。
「ほら、同じこと言ってる。」
雪菜は笑いがとまらない。
一緒にオンラインのスマホゲームを
するようになって、
凛汰郎の性格も割かし、社交的になりつつある。
雅俊の影響力はあるようだ。
雪菜は少しうれしかった。
「ほら、2年はそっちの方向でしょう。」
雅俊の背中を押した。
あえて、凛汰郎の横にいたのを避けただけだ。
「時間だろ、行くぞ。」
凛汰郎は、雪菜にゆびさして伝える。
「ちぇ、のけものかーい。」
雅俊は、ぶちぶちと文句を言いながら、
頭にバックを持った両手を組んで、
横で2人を確認しながら、しぶしぶ教室に向かう。
談笑しながら、3年の教室向かっている2人を見ていると
もやもや感が消えなかった。
「昨日は、ごめんね。ありがとう。
お風呂上りだったのに、来てくれて。
よくよく考えてみたら、凛汰郎くんの家から
あそこの公園まで遠かったかなって思ってたよ。」
「ああ、別にいいよ。
自転車立ちこぎしたって言ったっしょ。
そんな遠くないって。」
「そう?なら良いんだけど。」
横に並んで仲良さげに教室に入ると
案の定、緋奈子にじっと見つめられた。
「おやおやぁ?
お2人で仲良く登校ですか?」
「緋奈子、おはよう。」
完全なるスルーを貫き通すつもりの雪菜。
無理に等しい。
「おはよう。雪菜、それはないよ。
バレバレだから。」
「……え?」
「よかったね。」
「もう、噂になっていたよ。
昨日の学校帰り仲良く帰ってたでしょう。」
「み、見られてた…。」
「うん、何言ってるのよ。
雪菜、あんた自覚症状ないみたいだけどね。
雅俊くんと同じで、あんたもファンクラブようなの
あるみたいだから、気をつけなさいよ?」
「え?!嘘、そんなわけないでしょう。
聞いたことないよ?
なに、なに。そのファンクラブメンバーが
私を見張っているってこと?」
「噂になるくらいだからそういうことよ。
ストーカーにならないだけ平和よね。
どちらのファンクラブメンバーは、雅俊くんと交際したら
美男美女カップルかって校内新聞になってるくらいだよ。」
「ありえないけどなぁ。なんで私がそうなるのかな。
それ言うなら、緋奈子の方じゃないの?」
「なんで、私よ。
鼻ぺちゃでそばかすだらけの私なんて
選ぶわけがないわ。
やめてやめて。
ほら、もうすぐホームルーム始まるよ。」
そんな2人の話の横で先に席に座っていた凛汰郎は
ずっと何も話さずに前を向いていた。
緋奈子にはまだ心を開いてないようだ。
持っていたバックを背負いなおして、
駐輪場から昇降口に向かう。
同じように昇降口に向かう生徒が行きかっている。
衣替えがとっくに終わっているのに
いまだに半袖ワイシャツになっている人や、
制服のジャケットではなく、カーディガンを羽織る人がいる。
まだ、朝が少しだけ寒いが、
昼間は汗をかくくらいの天気だった。
後ろから走ってくる音が聞こえてくる。
誰だろうと後ろを振り向くと
何となく予測はついていた。
「雪菜、ちょっと待ってー。」
雅俊が、追いかけてきた。
ジロジロと後輩や同級生たちが見てくる。
さすがは、ファンクラブができるほどのモテ男。
自分に話すだけでこんなに注目浴びるのかと
ちょっと嫌な気分になった。
「何?」
いつものおはようも無しに話す。
「足早いもんな。
あっという間に行くんだから。
俺も今日、チャリで来たからさ。
今追っかけてきたのに…。」
息が荒い。
「だから、何の用事?
ギャラリーができるの嫌だから早くして。」
「え、あー。ごめん。
バックからごそごそと、何かを取り出す。」
透明なビニール袋に入っていた。
「あ、あれ。それって…。」
雅俊は、小さなぬいぐるみキーホルダーを
渡した。狼のキャラクターだった。
凛汰郎に買ってもらっていたぬいぐるみが
取れていたとは気づかずに今、思い出した。
「そう、バックから落ちてたみたいだから
拾っておいた。」
「あー-、ありがとう。」
「泥んこ、ついてて、洗うの苦労したんだぞ。
洗ったのは、ばぁちゃんだけどな。
ペット飼ってるみたいにドライヤーで
乾かしたんだぞ。」
「ふーん…。」
「よ。」
雅俊の後ろから凛汰郎が雪菜に手を振る。
「あ、おはよう。」
「うひゃ!!」
雅俊は凛汰郎に気づいて、びっくりした。
「何、ビビってんだよ。」
「先輩、昨日はすいませんでした…。
俺のせいで、ボロ負けで…。」
「そのこと?
別に毎回期待してないし…。」
「何?ゲームの話?」
雪菜が話の間に入りこむ。
「いつもこいつやられてさ。
負けるんだよね。
俺がレベル高いから強いメンバーが
相手になるんだけどさ。
仕方ないかなって。」
「ごめんね、雅俊、相手してもらって。
何か逆に申し訳ない。
弟も混ぜてもらってるんだよね。」
「そうそう、いやいや、
徹平くんの方、うまいのよ。
悪いけど…。」
雅俊の背中に見えない大きな矢が突き刺さる。
「先輩、キツイっす。
言わないでくださいよ、それ。」
「そお?」
「なんか、2人とも仲いいね。」
「どこが?」
「どこが?」
2人同時に同じセリフを言っていた。
「ほら、同じこと言ってる。」
雪菜は笑いがとまらない。
一緒にオンラインのスマホゲームを
するようになって、
凛汰郎の性格も割かし、社交的になりつつある。
雅俊の影響力はあるようだ。
雪菜は少しうれしかった。
「ほら、2年はそっちの方向でしょう。」
雅俊の背中を押した。
あえて、凛汰郎の横にいたのを避けただけだ。
「時間だろ、行くぞ。」
凛汰郎は、雪菜にゆびさして伝える。
「ちぇ、のけものかーい。」
雅俊は、ぶちぶちと文句を言いながら、
頭にバックを持った両手を組んで、
横で2人を確認しながら、しぶしぶ教室に向かう。
談笑しながら、3年の教室向かっている2人を見ていると
もやもや感が消えなかった。
「昨日は、ごめんね。ありがとう。
お風呂上りだったのに、来てくれて。
よくよく考えてみたら、凛汰郎くんの家から
あそこの公園まで遠かったかなって思ってたよ。」
「ああ、別にいいよ。
自転車立ちこぎしたって言ったっしょ。
そんな遠くないって。」
「そう?なら良いんだけど。」
横に並んで仲良さげに教室に入ると
案の定、緋奈子にじっと見つめられた。
「おやおやぁ?
お2人で仲良く登校ですか?」
「緋奈子、おはよう。」
完全なるスルーを貫き通すつもりの雪菜。
無理に等しい。
「おはよう。雪菜、それはないよ。
バレバレだから。」
「……え?」
「よかったね。」
「もう、噂になっていたよ。
昨日の学校帰り仲良く帰ってたでしょう。」
「み、見られてた…。」
「うん、何言ってるのよ。
雪菜、あんた自覚症状ないみたいだけどね。
雅俊くんと同じで、あんたもファンクラブようなの
あるみたいだから、気をつけなさいよ?」
「え?!嘘、そんなわけないでしょう。
聞いたことないよ?
なに、なに。そのファンクラブメンバーが
私を見張っているってこと?」
「噂になるくらいだからそういうことよ。
ストーカーにならないだけ平和よね。
どちらのファンクラブメンバーは、雅俊くんと交際したら
美男美女カップルかって校内新聞になってるくらいだよ。」
「ありえないけどなぁ。なんで私がそうなるのかな。
それ言うなら、緋奈子の方じゃないの?」
「なんで、私よ。
鼻ぺちゃでそばかすだらけの私なんて
選ぶわけがないわ。
やめてやめて。
ほら、もうすぐホームルーム始まるよ。」
そんな2人の話の横で先に席に座っていた凛汰郎は
ずっと何も話さずに前を向いていた。
緋奈子にはまだ心を開いてないようだ。