魔女と呼ばれた子爵令嬢、実は魔女ではく聖女でした⁉
彼女の言うことを信じるのですか?」
青髪の騎士、カーティス・ブライトの言葉に同じく白髪の騎士、ティルマン・エースティーも不安そうな顔でミシェルを見やる。
ミシェルへの毒殺未遂事件で容疑者の一人になったエスティラ・ルーチェ。
噂ではかなりの我が儘で癇癪持ちですぐに男に色目を使うふしだらな女で、養い親であるロマーニオも手を焼いているという。
しかも品も学もなく、自分がどこの学校にも受からないからと従姉妹のアカデミーへの入学を取り消したという酷い話もある。
黒い髪、緑色の瞳はルーチェ家では珍しく、『子爵家の魔女』とも呼ばれているのだが。
「噂は噂でしかないね」
ミシェルはエスティラを見て噂とは全く違う印象を持った。
我が儘で癇癪持ちなら連行した際に文句の一つも言うだろうし、男好きだという割には自分に色目を使ったり媚びたりする様子もなかった。
礼をすると言っても自分ではなく側にいた聖獣達にして欲しいと意味が分からないことを言うし、最終的に僕にして欲しいことが仕事の紹介だ。
拳を突き上げて喜ぶ仕草に品はないが素直でいっそ清々しいと思えた。
きっと、彼女は家を出たいわけがあるのだろう。
「彼女は犯人じゃないよ」
「何故そう言い切れるのです?」
カーティスは言う。
「毒は実際に入ってたんだし、僕を殺したいならあえて助ける必要ないじゃない。僕を助けて金銭の要求をするなら犯人の可能性もあるけど、彼女は一度僕から金銭を要求する機会を自ら手放したんだ。二回聞いて出てきたのが仕事の紹介だよ? 僕の側において欲しいと言うなら悪巧みも考えられるけど」
ミシェルは会場でエスティラにワインを奪われた時のことを思い出す。
あの時の彼女は必死そのものだった。
息を切らせて上下する肩、汗で額に張り付いた髪、ガクガクと震える脚は遠くから必死に走って来たように思えた。
そしてロマーニオ・ルーチェに平手打ちされて倒れたにも関わらず、零さないようにワイングラスを必死に守る姿はとても僕に毒を飲ませたかった犯人だとは思えない。
靴を脱げば足は靴擦れで踵は血だらけだし、指は漏れなく水ぶくれができていて皮も捲れていた。
頬も真っ赤に腫れていた。
痛かっただろうに。
それでも僕に毒を飲ませまいと駆けてきたのだから、犯人だと思えというほうが無理な話だ。
「君達は自分の聖獣をどう呼んでいる?」
ミシェルは二人の騎士に問う。
「愛称です」
「同じくです。というか、聖獣はみな愛称で呼ばれたがりますから、契約時に愛称で呼ぶことが制約に入っていますよね」
カーティスが短く答えた後にティルマンも答える。
「その通り。僕ら聖獣士は聖獣と契約する時に、愛称で呼ぶように強要される。だから基本的に仲間の聖獣でも愛称しか分からないことがほとんどだ」
それなのに、彼女はどの聖獣も本当の名前を知っていた。
この二人も同じことを疑問に思ったよだ。
何故聖獣の名前を知っているのかと問おうとしたカーティスとティルマンをミシェルは目で制止した。
聖獣は人間を襲いはしないが、懐きもしない。
それなのに彼女は気難しい性格の聖獣達に囲まれていた。
そして面白いのが聖獣達がみな、どこか楽しそうな様子を見せていた。
「ペンと紙を用意してくれる? あと封筒三枚」
すぐにカーティスが用意した紙にペンを走らせる。
手紙を書き終え、封筒を閉じてティルマンに渡した。
「すぐに届けて」
青髪の騎士、カーティス・ブライトの言葉に同じく白髪の騎士、ティルマン・エースティーも不安そうな顔でミシェルを見やる。
ミシェルへの毒殺未遂事件で容疑者の一人になったエスティラ・ルーチェ。
噂ではかなりの我が儘で癇癪持ちですぐに男に色目を使うふしだらな女で、養い親であるロマーニオも手を焼いているという。
しかも品も学もなく、自分がどこの学校にも受からないからと従姉妹のアカデミーへの入学を取り消したという酷い話もある。
黒い髪、緑色の瞳はルーチェ家では珍しく、『子爵家の魔女』とも呼ばれているのだが。
「噂は噂でしかないね」
ミシェルはエスティラを見て噂とは全く違う印象を持った。
我が儘で癇癪持ちなら連行した際に文句の一つも言うだろうし、男好きだという割には自分に色目を使ったり媚びたりする様子もなかった。
礼をすると言っても自分ではなく側にいた聖獣達にして欲しいと意味が分からないことを言うし、最終的に僕にして欲しいことが仕事の紹介だ。
拳を突き上げて喜ぶ仕草に品はないが素直でいっそ清々しいと思えた。
きっと、彼女は家を出たいわけがあるのだろう。
「彼女は犯人じゃないよ」
「何故そう言い切れるのです?」
カーティスは言う。
「毒は実際に入ってたんだし、僕を殺したいならあえて助ける必要ないじゃない。僕を助けて金銭の要求をするなら犯人の可能性もあるけど、彼女は一度僕から金銭を要求する機会を自ら手放したんだ。二回聞いて出てきたのが仕事の紹介だよ? 僕の側において欲しいと言うなら悪巧みも考えられるけど」
ミシェルは会場でエスティラにワインを奪われた時のことを思い出す。
あの時の彼女は必死そのものだった。
息を切らせて上下する肩、汗で額に張り付いた髪、ガクガクと震える脚は遠くから必死に走って来たように思えた。
そしてロマーニオ・ルーチェに平手打ちされて倒れたにも関わらず、零さないようにワイングラスを必死に守る姿はとても僕に毒を飲ませたかった犯人だとは思えない。
靴を脱げば足は靴擦れで踵は血だらけだし、指は漏れなく水ぶくれができていて皮も捲れていた。
頬も真っ赤に腫れていた。
痛かっただろうに。
それでも僕に毒を飲ませまいと駆けてきたのだから、犯人だと思えというほうが無理な話だ。
「君達は自分の聖獣をどう呼んでいる?」
ミシェルは二人の騎士に問う。
「愛称です」
「同じくです。というか、聖獣はみな愛称で呼ばれたがりますから、契約時に愛称で呼ぶことが制約に入っていますよね」
カーティスが短く答えた後にティルマンも答える。
「その通り。僕ら聖獣士は聖獣と契約する時に、愛称で呼ぶように強要される。だから基本的に仲間の聖獣でも愛称しか分からないことがほとんどだ」
それなのに、彼女はどの聖獣も本当の名前を知っていた。
この二人も同じことを疑問に思ったよだ。
何故聖獣の名前を知っているのかと問おうとしたカーティスとティルマンをミシェルは目で制止した。
聖獣は人間を襲いはしないが、懐きもしない。
それなのに彼女は気難しい性格の聖獣達に囲まれていた。
そして面白いのが聖獣達がみな、どこか楽しそうな様子を見せていた。
「ペンと紙を用意してくれる? あと封筒三枚」
すぐにカーティスが用意した紙にペンを走らせる。
手紙を書き終え、封筒を閉じてティルマンに渡した。
「すぐに届けて」