魔女と呼ばれた子爵令嬢、実は魔女ではく聖女でした⁉
「ロン、落ち着きなよ」
ミシェルはルーチェ家に向かう途中の馬車の中でそわそわと落ち着かない様子の聖獣に声を掛ける。
さっきまで大人しく膝の上でくつろいでいたのに、急にそわそわとせわしなく飛び回り、小さな窓に小さな身体をぶつけたりしている。
何かを懸命に訴えているように見えなくはないが、自分には聖獣の考えや言葉は分からない。
明らかに様子がおかしい。それだけははっきり分かる。
もしかして、彼女に何かあったのか?
昨晩の部下の話ではロマーニオはエスティラの顔を見るなり、罵詈雑言浴びせかけ、状況を説明すると態度をコロッと変えたという。
昨夜のエスティラに対するロマーニオの態度から家でも良い扱いは受けていないだろうと思われる。
彼女は亡くなったルーチェ家前当主の娘でロマーニオは姪と叔父の関係だ。
実の娘ではない彼女を疎ましく思っているのかもしれない。
仕事を紹介すると言ったミシェルの前ではしゃぐエスティラを思い出す。
あれは仕事というより、家から出たいってことだったんだろう。
そうであればその願いは叶えてやれる。
昨晩、拳を突き上げて喜んだ君は今度はどんな風に喜びを表現するのだろうか。
そんなこと考えているうちに馬車が停まる。
「ロン、エスティラならすぐに会えるよ」
小さな聖獣に話しかけると物憂げな表情を見せる。
一体どうしたんだ?
普段とは違うロンの様子が引っ掛かりながらミシェルは馬車を降りた。
「