辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
 エリーズと喧嘩している間、リティは鳥舎でランベールと話をした。

 あの日、ランベールに言われた言葉と手の熱さは今も鮮明に思い出せる。

「もう少しだけでいいから、殿下と話をしたいわ」

「……やっぱりあなたのほうが私よりも妃に向いていますね」

 しみじみと言われるも、リティにはその理由がわからない。

「どうして?」

「私はそんなふうに考えたことがありません。殿下に気に入られなければと思うばかりで、あの方がどんな方なのか知ろうともしませんでした」

 エリーズはじっとリティの目を覗き込んでから、急に晴れやかに笑った。

 そのはずみに、まだ残っていたらしい涙がほろりと落ちる。

< 231 / 426 >

この作品をシェア

pagetop