辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
 春の森を思わせる新緑の瞳はぱっちりと丸いせいか、眉尻が下がっていても気弱そうな印象を与えない。

 少女の名は、リティシア・クロエ・ティルアーク。マルセルの娘で、ティルアーク家唯一の女性だ。

「いや、違う。違うんだ。困らせてるわけじゃない。ただちょっと話が噛み合わなくてな」

 マルセルが急にしおらしくなり、しどろもどろに言い訳をする。

「じゃあそのテーブルの穴はなに?」

「こ、これは……その……つい……」

「うちの財政が厳しいってわかってるはずよね。テーブルを新調するのにいくらかかると思っているの?」

 小柄な少女が、自分よりはるかに大きな男を説教する姿はなかなか奇妙だった。

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