辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
 その様子があまりにも必死だったから、リティはくすくす笑った。

「それに薬だけじゃなかったよ! 王妃殿下のために美容水を作って――」

 言いかけたニナが不意に声を詰まらせる。

「どうしたの?」

 ベッドから起き上がると、リティはすぐニナの顔を覗き込んだ。

「あ、ぅ」

 ニナの瞳の色が、一瞬で真っ赤に染まる。

「ニナ!」

 ベッドに崩れ落ちて喉を掻きむしるニナの呼吸が、どんどん浅くなっていった。

「どうしたの!? ねえ!」

「人を呼んでくるわ!」

 デルフィーヌが弾かれたように部屋を飛び出す。

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