辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
「デルフィーヌ・マルグリット・ルビエ様。あなたが次代のエモニエの国母となられるお方です」

 拍手が沸き上がり、顔を上げたリティもそれに続こうとした。

(大丈夫。泣かないでいられそう)

 なんとか笑顔を作ろうとしたそのときだった。

「お断りいたしますわ」

 凛と胸を張ったデルフィーヌがよく通る声で言う。

「……は? え?」

 まさかの事態にイーゼル卿が素の反応を見せる。

「今、なんと……」

「お断りいたします、と申し上げました。この国にはわたくしよりも未来の王妃に……生涯、ランベール殿下の隣にいることがふさわしい女性がいます」

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