辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
 息をするのも忘れていたリティに、デルフィーヌが笑いかける。

「わたくし、友だちは裏切れなくてよ」

 胸を詰まらせたリティは、泣くまいと思っていたのに涙を流してしまった。

「そういうわけですので、わたくしは辞退させていただきます。ごきげんよう」

 デルフィーヌは決して下を向かず、胸を張って大広間を出て行った。

 颯爽と立ち去る彼女を、ただひとり、ジョスランだけが追いかける。

「よもや、こんなことになろうとはな」

 はくはくと口をわななかせているイーゼル卿の代わりに、あろうことか国王が話し始める。

「ランベール。歴代でも妃に逃げられたのはお前が初めてであろうな」

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