悪女は破滅を身ごもる~断罪された私を、ヒロインより愛するというの?~
「お黙りなさい! 私へ意見することは、国への反逆行為も同じよ! 兵士、即刻そいつらを縛り上げなさい!」

 アヴリーヌは思わず感情的になって叫ぶ。兵士達は恐れをなして後ずさった。
 
 「悪女」になると決めてから、アヴリーヌは気に入らない者達に容赦ない仕打ちを与えてきた。逮捕、幽閉、牢獄、追放。無実の罪をなすりつけ、策略で陥れた者さえある。正直、断罪される自覚があるくらいのことはやってきた。

(でも、あなたに……幸せを約束されているヒロインなんかに、負けてたまるものですか!)

「さあ、早く私の命令を聞きなさい! さもなくば、全員牢獄行きよ!」

「いいえ、捕らえられるのは貴女の方です」

 ――――え?
 
 アヴリーヌの叫びを遮るように、突然ジェイドが腰の剣を抜いた。切っ先をアヴリーヌの鼻先に突きつけ、動けば斬るとばかりに刃を煌めかせる。
 
「その綺麗な肌に傷をつけられたくなければ、おとなしくしなさい」

(何よ、これ……)
 
 アヴリーヌは思わず言葉を失う。
 ここはエマがアヴリーヌに言い返し、退かない決意を見せるシーンだ。ジェイドの出番ではない。そもそも、彼が剣を抜くシーンなどゲームで見た覚えがない。

(「キャラクター」が、「設定」と違う行動をしている……?)

 アヴリーヌが混乱している隙に、ジェイドが兵士に目配せする。殺到した兵士達にアヴリーヌは取り押さえられ、後ろ手に縄で縛り上げられた。

「離しなさい、無礼者……!」

 髪を振り乱して暴れても、屈強な兵士達相手ではビクともしない。やがて全ての抵抗が意味をなさないと悟ったアヴリーヌは、ついに床に膝を突き、敗北を認めた。

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