石の下に眠る君に早く 「愛してる」が言いたい
『一緒に花火してくれてありがとう。すごく楽しかった。一人になった夜、病室で手紙を書いてます。

手も指もブルブルして、上手くいかない。何度も書き直したんだけど、許してね。

実はあの日、お医者さんから”もう数日しか持たない”って言われていたんだ。黙っててごめん。

何度も言おうと思ったけど、ピアスとかくれるじゃない。もうこっちは、死んじゃうって分かってるのに。

いつも私の事を大切にしてくれて、笑わせてくれてありがとう。照れ臭くてなかなか言葉に出来なかったけど、感謝してたよ。

心臓は半分こできなかったけど、ピアスは半分こしよう?ここに、同封しておきます。さて、もう一個はどこにあるでしょうか?



じゃじゃーん。答えは私のお腹の中です。

火葬する時にね、金属は棺に入れられないんだって。だからね…飲んじゃった。だって一緒に居てくれるって言ったでしょ?最後までワガママな私を許して欲しいな。

さぁ、もう独り身になったね。私のことを忘れて、新しい彼女を作って、人一倍幸せになるんだよ。楽しいこと沢山して、結婚して、子供作って。良いパパになれるはず!だから自信持って。

だって私のことを、あんなに愛してくれたんだもん。言葉で言われなくても伝わってた。幸せだったよ。すごく。

私が出来無かった事を、代わりに叶えてね。でも誕生日の日だけは、思い出して欲しいな。それだけで良いの。

死ぬのは怖いよ。寂しいよ。でも、病気から解放されるのは嬉しいかもね。

それに、半分このピアスがあるから、頑張れる!これは私がこのままお空に持っていきます。

それじゃ、またね。ありがとう。だいすき』

手紙を読み終わると、なぜだか頬が濡れてる事に気がついた。

便箋に残された彼女の涙の跡の上に、僕の涙もいくつも重なっている。なんともまぁ、頑固者同士のカップルだ。似たような性格しているな、と泣きながらも少し笑った。
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