石の下に眠る君に早く 「愛してる」が言いたい
「好きとか。愛してるとか。言ってくれないの?」

驚いた。そんなお願いをされたことは、過去に一度もなかったのだから。

「すっ。すきだよ。」
吃りながら伝えた言葉に、彼女は満足気に頷いた。

”愛している”とは何となく言い出せなかった。とても威厳のあるその言葉を、僕などという者が囁いて良いものか。戸惑いもあったし、正直気恥ずかしさもあった。

ピアスの効果だろう。今日のハルカはいつもよりだいぶ積極的だった。

「あ、そういえば」
僕は、話を変えることにした。

「花火買ってきたよ。さっき看護師さんに、”ちょっとだけ”って話をしてきた。病院の中庭で花火して良いってさ。行ってみようか」

この病院の建物から2人で出るのも、花火をするのも、初めてである。ゴールドのピアスをつけた天使は、目を輝かせていた。
< 9 / 13 >

この作品をシェア

pagetop