冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】

プライベートでのふとしたつぶやきだが、自分のアイデアがヒットの後押しをしたのかもしれない。

総務部在籍の杏奈が商品の開発や販売に関わる機会はゼロに近く、それまでにもそんな経験はなかったが、こうして自分の考えが商品に反映される喜びを知り、響が自身の仕事にやりがいと誇りを持っている理由がわかったような気がした。

響は優秀な開発担当で、このミールキット以外にもたくさんのヒット商品を市場に送り出している。

杏奈はふと響の余裕をたたえたきりりとした瞳を思い出し、頬が熱くなるのを感じた。

杏奈の父親、三園洸太と北尾食品の社長である響の父親、北尾基は同期入社で仲が良く、洸太が入社十年を待たず北尾食品を退職しそれぞれ結婚した後も、家族ぐるみの付き合いが続いている。

そのおかげで杏奈にとって響は生まれたときから近くにいる特別な存在で、妹のようにかわいがられてきた。

誕生日の今日、ここで待ち合わせているのも響だ。

そして彼は、杏奈が密かに想いを寄せている男性でもある。

三十三歳の響は入社以来順調に実績を積み重ね、その優秀な仕事ぶりで周囲からの期待は大きい。

響自身も昔から後継者としての自覚が強く、仕事への熱意もかなりのもの。

杏奈が入社して二年と少しの間にも、響が生み出したヒット商品は多い。

責任感と覚悟を持ち、そしてプレッシャーを跳ね返して仕事に向き合う響を、杏奈は尊敬している。


< 4 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop