冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】

ちょうど先週から彼女の個展が開かれていて、このあと響と一緒に見に行くことになっている。

少し前に響から誕生日プレゼントになにが欲しいかと聞かれて、もしも響の都合が合えば一緒に個展を見に行きたいとお願いした。

物ではなく大好きな作家の作品を大好きな響と一緒に楽しむ時間が欲しかったのだ。

響は杏奈の願いにふたつ返事でOKし、杏奈の誕生日の今日、個展に付き合う時間をつくってくれた。

そのあとは、例年どおり食事にも連れて行ってくれるらしい。

響は普段から出張が多いだけでなく、休日にも急ぎの仕事が入ったり、社長である父親とともに経済界の集まりに顔を出したりと忙しいが、杏奈の誕生日だけは毎年欠かさず時間をつくって祝ってくれる。

杏奈の両親はカフェを営んでいて忙しく、誕生日当日にゆっくり祝うのは難しい。

響はその事情を察して昔から杏奈の誕生日を祝ってくれるのだ。

両親には申し訳ないが、誕生日という特別な日を響と過ごせる幸運には感謝ばかりだ。

とはいえ響がそこまで杏奈をかわいがってくれるのは、杏奈を妹のように思っているからで、そこに特別な意味などないというのはよくわかっている。

それに響には見合いの話が幾度となく持ち込まれていて、遠くない将来結婚するだろうことも覚悟している。

響が結婚すれば杏奈は誕生日を祝ってもらえないどころか、ふたりで会う機会は激減するはずだ。


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