『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

電車があと3分ほどで来る予定。
腕時計をチラッと確認した匠刀は、私のマフラーを少し抓み上げて、首元が冷えないように気を遣う。

「今日は聞かないんだね」
「あ?」
「チューしちゃダメ?って」
「……ばーか、もうすぐ電車来んぞ」

クリスマスだからかな。
駅のホームにカップルが目立つ。
どこのカップルもラブラブしてるのに…。

小田急線に乗り、私たちは川崎へと向かった。

登戸駅で下車してバスに乗り換え。
十分弱乗車して辿り着いたのは、子ど向け漫画の第一人者とも言われる有名漫画家のミュージアム。

高校生カップルが訪れるのはちょっと珍しいかもしれない。
だけど、私は幼い頃に何度も入退院を繰り返していて、テレビのない病室でただじっと天井を見上げて過ごしていたから。
子供向け漫画を観ることも、劇場版を映画館に観に行くこともできなかった。

ミュージアムは子供向けかと思っていたけど、思っていた以上に楽しい。

常設の展示以外にも、企画もので原画展などもあって。
アニメの歴史を知ることもさることながら、カフェやショップの可愛さにも魅了された。

オリジナルのキーリングに刻印してくれるサービスがあって、色違いのキーリングに『T&T』と刻印して貰った。

それと、『みらい郵便』というのがあって、投函口が鈴の形をした可愛らしいポスト。

「1年後まで指定した月に送ることができるって」
「へぇ、面白そうじゃん」
「お互いの誕生日にメッセージを送るってのはどう?」
「おっ、それいいな」
「じゃあ、好きな絵ハガキ買って、メッセージ書こうか」

匠刀の誕生日は5月7日。
17歳の誕生日を、匠刀はどんな気持ちで迎えるだろうか。

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